エステル(イングリッド・チューリン)とその妹アナ(グンネル・リンドブロム)、その子ヨハン(ヨルゲン・リンドストロム)らは暑いヨーロッパの旅に疲れていた。姉の病気の悪化から、たまたま列車の止った町--言葉の通じない、字も読めない--のホテルに落着いた。だが二人の女にとってその滞在は空虚で不毛だった。エステルは翻訳の仕事を続けながら煙草をふかし、ウィスキーをあおり、満たされぬ気特を、他人に言えない恥ずかしい行為でなぐさめた。一方、アナにはエステルの存在はやりきれない。外出してみた。そして、ある男と知りあい、言葉の通じないのを肉体の行為で満足しあった。ホテルに帰った妹から発散するセックスに欲情さえ感じた姉は、そんな自由な性格を持つ妹を羨んだ。嫉妬か。知性と教養に支えられて来た自分……。黄昏。また外出しようとするアナを制した。男に抱かれに行くに違いない妹を見送りながら、自分の感覚が燃えてくるのを抑えようがなかったのだ。アナにとっては、優等生で父親にお気に入りの姉に対する反発は、ただ感覚的な愛の行動にすりかえる以外なかった。男はホテルにやって来ていた。母親と見知らぬ男が抱擁し、ある部屋に入って行くのを廊下で遊ぶヨハンが見ていた。エステルはそれを聞いてその部屋に行った。あられもない姿を見せるアナ。そこには、もう姉と妹をつなぐものは何ものもなかった。朝になった。一夜を廊下で過したエステルの容態はさらに悪化していた。アナはそれでも予定通り、病む伯母に心を残す少年の手をひいてホテルを出て行った。汽車の中でヨハンはエステルの手紙を開いた。「精神」と書いてあった。あのまま死ぬかも知れないエステルの遺書でもあろう。彼女はヨハンに何をたくしたのか。母子の汽車は無感動にエステルとの距離をひろげてゆく……。