終戦後まもなくの1947年、北アフリカ。ニューヨークからやって来た作曲家のポート・モレスビー(ジョン・マルコヴィッチ)とその妻で劇作家のキット(デブラ・ウィンガー)の目的は単なる観光ではなく、求めるべき夢さえ失なった彼らの深い喪失感をこの文明と隔絶し、あてどもない拡がりを持った世界で癒すためだった。その旅の道連れとなったのがポートの友人で上流社会に属するタナー(キャンベル・スコット)。結婚して10年、夫との心のすれ違いを感じるキットに、かねてより彼女に心を寄せるタナーは接近してゆく。やがて3人は次の目的地に向かうが、ホテルで同宿したイギリスのトラベル・ライター、ライル夫人とその息子で母親から金をせびってばかりいるエリックと同じ車に乗ったポートに対して、キットとタナーは別行動をとった。そしてそこでついにキットとタナーは一夜を共にする。が、アフリカ奥地の風土に嫌気がさしたタナーは別の土地へ向かい、二人きりになったポートとキットは彼らの心の虚無を象徴するかのようなアフリカの蒼穹の下でひととき愛を確認したかにみえたがそれもつかの間、ポートの体はチフスにむしばまれていたのだった。医者もいない砂漠の果ての町でポートは息絶える。ついに一人きりになったキットの旅は、しかしまだ続く。何もない砂漠の荒寥を自らの内面と一体化したかのようにアラブ人の隊商の中に身を埋め、男と体を重ねる彼女の眼はもはや何ものも映し出さないかのようであった。そんな彼女の行方を探すタナーの手でやっとキットは砂漠からタンジールへと連れ戻される。が、もはや彼女はもとの自分へと返ることなどできない。タナーが一瞬目を離すともはや彼女の姿はどこにもなかった。