同棲中の森崎小夜子と三浦晋作のところに、見知らぬ女が六歳ぐらいの子供を連れて現われ、晋作の子供だと言って押しつけていった。女の話では隣りに住んでいた明美という女が坊やを残して駆け落ちし、置手紙に晋作をはじめ五人の男の往所氏名が書いてあった。新一という坊やの名はあなたから取ったのだろう、と小夜子はむくれている。窮した晋作は新一を連れて父親捜しの旅に出た。小夜子も、ふるさとを探すと言って付いてきた。最初に名前のあった尾道の田島啓一郎は、市長選挙に立候補中だったが、事情を話すと、田島は十年前にパイプカットしていて、晋作は恐喝で逮捕されてしまう。結局、秘書が田島の名をかたっていたことがわかり、養育費として三十万円を貰うが、血液型から父親ではなかった。別府では第二の男、福田はおりしも結婚式のまっ最中、小夜子が百万円をふんだくったが、これまたシロ。天草で母親の生家に立寄った小夜子は母、千代が長崎丸山の大野楼にいたことを聞く。そして、千代は唐津に移ったという。第三の男は元ライオンズの選手で、今バーテンをしている桑野だが、みじめったらしく逃げ回るばかりだ。その夜、意地とやせ我慢で関係のなかった二人は、久びさに燃えた。仲直りした二人は唐津に向かい、そこで、小夜子は子供の頃の風景に、しばし、思い出に耽る。最後の一人は、若松の川筋者、高田五郎。五郎の家に行くと、親爺の幾松が出て「五郎は死んだ」とのことで、未亡人のまさが、新一を引き取ると言う。亡くなった五郎は発展家で、よそで作った子供は新一で四人目だそうだ。ところが、晋作と小夜子は長い旅をともにした新一に情が移り、別れるのが辛く、まさに新一を託して高田家を出たものの、再び引き取りに戻るのだった。