春藤靭負と、名乗る大名の下屋敷。お銀の方は、藩医から毒薬を手に入れ、奥坊主珍斉を使って、奥方毒薬を計画した。臆病者の珍斉はこのことを妹お由以に打明けたが、お由以は陰謀の証拠をつかみ、訴え出て、恩賞にありつこうと企み、お銀の方の腹心で武芸に秀でた梅野に殺された。その頃、大守の乱行を伝え聞いた国表から二人の国侍が出府してきた。国表からは毒虫お銀の方を斬るか、さもなくば追放せよと強く諌言。だが、国侍二人は上屋敷の下級武士で優男の磯貝伊織に斬られた。さらに、伊織は大守に命じられるままに、梅野を斬って捨てた。そして、お銀の方と伊織は愛撫の絶頂にふけった。奥方毒殺の報が入った。お銀の方は伊織と靭負と珍斉の処置を講じていたが、二人の関係に気付いた靭負が踏みこんできた。だが、お銀の加勢で、伊織は靭負を返り討ち。この様子を一部始終見ていた珍斉は危うく殺されかかるが、そこは抜目なく大目付に事の真相が通じるように細工してあり、百両を奪い取った。お銀の方と伊織は大守をも謀殺して祝盃をあげた。しかしその盃に毒薬が入っており、血をはきもだえる伊織の刀を逃げるお銀の方、それはさながら地獄絵図だった。這いずりまわるお銀の方の耳に……奥方様は生きておられる、珍斉が毒を盛ったとは真赤な偽だ……と聞えてくるのは、まことのことかそれとも幻だろうか。