灰色の空、霜でぬかったあぜ道を、よれよれの道中合羽に身をつつんだ若い男が三人、空っ腹をかかえて歩いている。生まれ故郷を飛び出し、渡世人の世界に入った源太、信太、黙太郎である。彼等の望みは金と力のある大親分の盃をもらい、ひとかどの渡世人になることだった。流れ流れて三人は、二井宿・番亀一家に草鞋をぬいだ。源太はここで偶然、何年も前に母と自分を置き去りにして家出した父・安吉と再会した。夜、源太は安吉の家に行く途中、百姓・又作の家の井戸端で、若い女房のお汲が髪を洗っているのをみた。白い肌が闇の中に浮んでいる。背後からお汲に組みついた源太は、あばれるお汲を納屋につれこんだ。翌日、安吉が、番亀の仇敵の赤湯一家と意を通じ、壷振りと組んでイカサマをやり、番亀一家の評判をおとそうとしたのがばれた。憤怒した番亀は、渡世人の掟を破った親父の首を持ってこいと源太に命じた。親父を斬ることはない、と引止める黙太郎と信太に「義理は義理だ」と源太は飛び出したが、安吉は留守。気抜けした源太は、お汲の家に行き「俺と逃げないか」と声をかけた。源太を見つめていたお汲はコクンとうなずいた。二人はその場で抱き合った。やがて安吉の家へ引返した源太は、長脇差を抜き放ち、驚く親父に斬りかかった……。揺れ動く貧しい灯が、蒲団の上に寝かされている安吉の死顔を照らしている。源太の頬には涙が流れている。やがて、源太は僅かな草鞋銭を渡され、番亀を追い出された。黙太郎、信太、そしてお汲も一緒だった。道中をつづける四人。途中で信太が竹の切株で足を傷つけ熱を出した。四人が夜を明かした祠の前に人の気配がした。追手がかかったと一同緊張するが、お汲の亭主の息子の平右衛門だった。お汲をつれ戻しに来たのである。素直に帰ると見せかけたお汲は、背後から鎌で平右衛門に襲いかかり、殺害してしまった。呆然とみつめる源太と黙太郎。兇状持の上にまた殺人、事態はますます悪化した。源太はどうしても家に帰りたくないというお汲を飯盛女に売ることにした。その頃、祠の中で信太は息をひきとっていた。残った源太と黙太郎は飯岡の助五郎のもとへと道中を急いだ。途中、立寄った飯岡一家の野手の半兵衛が、笹川一家へ寝返る、という話を小耳にはさんだ黙太郎は、半兵衛の首を持って飯岡へ行けば盃が貰えるといい、源太は一宿一飯の恩義があると意見が対立した。折しも半兵衛が笹川へ出かけたのを知った二人は半兵衛を追った。「出世の糸口を!」「渡世の義理を!」半兵衛を追う黙太郎に源太が斬りつけた。そして、隙を見てかけ出した黙太郎を追った源太は崖に転落してしまった……。そうとも知らない黙太郎は、半兵衛を見失ない、戻って来るが源太の姿は何処にも見えない。「源太ァ源太ァ」いつまでも黙太郎は源太の名を呼びつづけるのだった。