大正末期の北海道は北見--。馬喰米太郎は女房が難産で死んだ日、暴力のあげく、あいまい屋で酌婦ゆきに急所を蹴られて寝込んでしまった。数年後、バクチもやめて育てた甲斐あって、小学校へ入った息子太平は成績もクラス一番。太平を日本一の馬喰に育てる夢をもつ米太郎は、新天地を求めてルベシベの町へ移った。高給を出そうという大牧場の主人が、北見馬喰の誇りを捨て金欲にのみ走る昔馴染の六太郎と知って断る米太郎だから、暮しは相変らず苦しい。が、太平はこの町でも優等生だった。担任の津田先生に、子供の意志を無視して馬喰にするのか--となじられ激怒した米太郎も、太平君にはお母さんが必要だねという先生の言葉は胸にこたえた。やがて、米太郎は再会したゆきに求婚して断られたが、長い旅馬喰から戻ってみると、家ではゆきと太平が仲良く彼を待っていた。ゆきの強い態度で、米太郎は太平の中学進学に同意した。学資として売ろうとした馬が病気になり、米太郎はとうとう六太郎から金を借りてしまった。しかも道庁長官の金盃を争う馬市の日、審査員の一人たる米太郎は、六太郎に売収されて家で寝ている始末だ。そこへゆきが、百円の札束をもって米太郎を叩きおこし、会場へ飛んで行けとどなった。母の形見の懐剣を売ってきたのだ。春が来た。中学へ入学する太平を送って帰った米太郎は、はげしく喀血するゆきを見てハッとした。ゆきの最期の時がきたとさとった米太郎は、馬を駆って汽車を追った。「忘れるな、ちゃんと競走じゃぞ!」と叫びながら……。