円城家に新しい女中さんがきた。田中姫子は福島の貧しい農家に生れ、砂利トラック相手の売春婦にまで身を落した過去をもっていた。だが、砂利トラックの運転手鈴木亀吉を知ってからは、地道に結婚資金を稼ぐために、弥生家政婦会に所属したのだった。円城家は、狭心症で寝たきりの主人礼次郎と、芸者あがりの後妻由紀、長男のテレビライター英介、長女の短大生冬子、それに婆やのしのが、広い邸宅に住むブルジョア家庭であった。姫子にとっては上流家庭の雰囲気だけでも、快いものであったが、礼次郎の莫大な資産をめぐる由紀と冬子の争いには、へきえきさせられた。そんな姫子に悲劇が襲って来たのは、冬子の誕生日であった。らんちき騒ぎの末、クジ引きで負けた冬子が、その全裸の代りを姫子に要求したのだ。だがそれは英介の出現で、救われた。前から姫子の肉体を狙っていた英介にはよいチャンスであった。思いあまった姫子は、弥生会のはつに廃業を申し出たが励まされて、ひとまず亀吉の実家に帰った。だが英介の子供を身ごもったと知った亀吉に追われ、再び円城家に帰った。一方冬子は、財産を狙い、礼次郎の命を縮めて英介とも関係をもつ由紀へのはらいせに、姫子を英介の別荘にやり、由紀との三人の対決を仕組んだ。数日後、由紀に呼び出された姫子は、二百万円で子供をゆずって欲しいと持ち出された。財産目当の由紀が巧みに考えたことであった。思いあまった姫子は、礼次郎にすべてを話した。だが、礼次郎は、姫子を養女にしようと言った。あわてた英介、冬子、由紀の三人は、姫子を誘いだし湖に突き落した。だがその夜、英介は水びたしの姫子によって猟銃で射殺された。姫子の執念が、英介の前に辿りついたのだった。