昭和十八年。最南端の激戦地・ブイン基地には、零戦乗りのベテラン加賀谷飛曹長以下、軍政、菊村、金友、小坂、滝、前田等八生隊員が後任隊長出迎のため集合していた。差任した九段中尉に、古参の八生隊員はがっかりした。彼等は、アメリカから疫病神と恐れられている志津少佐が来ると信じていたからだ。しかし、九段はできた。ベテラン加賀谷もかたなしの技倆に、戦術も抜群だった。飛行場の片隅に捨てられた、三号爆弾を活用して、B17十四機を撃墜。ニセ暗号を打電して、敵編隊をオビキ出し、その留守中を叩くといったやり方で大戦果をあげていった。しかし、竜田参謀の強いる無理な戦闘のため、菊村、前田の二人が空に散った。一方、大本営では、ガタルカナルに逆上陸を計って、神崎中将と草川参謀を派遣して来た。ガタルカナルに電探基地を発見している九段はその作戦に反対した。草川参謀は大和魂で乗り切ると主張してゆずらず、その上、九段が実は、南太平洋で命令違反の科で降等された志津少佐だと発表した。喜んだのは零戦塔乗員だけで、他はシブイ顔をした。九段は二百機からなる戦爆連合軍を救うため、無茶な作戦から手を引いたのだった。今働らいている飛行機乗りは、皆その生き残りなのだ。対立した二人を前に神崎中将は、空からの援護なく逆上陸を取行する決心をした。しかし、今度は加賀谷が九段を説いた。「俺達がやらなきゃ、逆上陸一万人の陸戦隊員が全滅だ」九段の心は決った。残った零戦四機が飛び立った。ガ島上陸軍の艦上を飛び去る零戦四機に神崎と、草川は挙手の礼で見送るのだった。