この物語は織田信長の天下統一と共に発展していく。時は室町幕府十三代将軍足利義輝の治世、各地に群雄割拠、戦いに明けくれる永禄三年、奥州出羽の最上伏影城城主結城光春は家老坂上主膳の謀略のため非業の最期をとげ、光春の一子重太郎は辛うじて逃げのびた。数年後父の恨みを晴らそうとして主膳をねらう重太郎の姿が城下にみられた。しかし主膳の妹の忍者、螢火によって重太郎は重傷を負わせられたが、伏影城に恨みを抱く影丸と名のる黒装束の忍者に救われた。とき、折りから大飢饉が各地を襲い、その上重税にあえぐ百姓たちの怒りは頂点に達していた。謎の人物影丸はこの状況を利用して、重太郎を擁し不満野武士と百姓たちを巧みに操り、伏影城陥落に成功した。だがもう一歩のところまで主膳を追いつめた重太郎の前に螢火が再び現われ、彼は父の仇をうちそこねた。そして影丸の姿はもうそこにはなかった。辛うじて伏影城を逃がれた主膳は、螢火と共に、明智光秀の影武者となった。一方重太郎は逃げた主膳を求めながら剣修業の旅に出、大和の柳生宗厳の道場に身を寄せた。偶然道場を訪ねてきた者から、ある時重太郎は主膳が尾張清洲城にいることをきき直ちに尾張に向った。時あたかも信長が突如、美濃の稲葉城攻略を開始した。そしてこの信長の天下統一の大事業の前に各地にひんぴんとして百姓一揆が勃発した。しかし信長の軍勢と衝突する一揆軍のいる所、必ず影丸の暗躍があった。かくして忍者、剣客、武将、美少女入り乱れるなかで、戦国を生きるすべての人々が歴史を担いつつ、日本の中世は近世へと胎動を続けていったのであった。