「お母さんは自衛隊や防衛大学が、いいか悪いかわからない。でも、戦争の匂いのする所へはお前をやりたくない!」防大の一次試験に合格した一人息子の新二に、とみはこう言って反対した。だが、父の大介は防大へ行くことを喜んでいた。新二も防大を踏み台に理工科系の知識を身につければよいと思っていた。中学時代の同級生でバスの車掌をしている京子は、そんな新二に抵抗、防大行きに反対した。ある日、校内に貼られた一枚の反戦ビラがもとでホームルームが開かれた。なぜ学校で就職組が差別をい受けるのか。なぜ教育が社会に直面する問題を避けるのか。生徒たちは活発な発言を繰返した。それから間もなく新二は坂西に誘われて反戦デモに参加した。隊列の中の彼にひとつの目的で結ばれた者同志の、強い連帯感が伝わって来た。デモに参加したことが、学校で問題になった。若者たちの純真な気持を理解しようとしない教頭。上田先生は「生徒たちの不満や不信は、何に根ざしているのでしょうか」と叫んだ。新二たちは、学生処分に反対し、職員室に押しかけ抗議した。なぜ反戦デモがいけないのか。なぜ戦争がいやだといってはいけないのか。新二は考え悩んだ。そして防大進学をきっぱり振り捨てた。