北国の渓谷にある発電所の技師木島浩輔は、病弱の妻時枝が東京の実家へしばらく帰りたいというのを送って直江津まで出た。時枝は病弱なばかりでなく、山深い単調な生活に堪えられなかったのである。浩輔は直江津からの帰途東京から新しく赴任して来た電気技手藤川敦子を同行したが、車中彼女にからかいかけた不良を敦子が逆に翻弄したのにはおどろいた。山の生活では、しかし敦子は不自由な浩輔の身辺にまめまめしく気をくばってくれた。大晦日の夜には、例年の通り発電所でパーティが催され、その夜浩輔と敦子とはいつまでも踊り、二人で雪の戸外へ出て行ったが、それ以上には進み得ない二人だった。時子は東京へ出て、初めて浩輔のない生活の無意味なことを悟り急に思い立って山へ帰って行った。時子が着いた日、浩輔と敦子は二人でスキーに出かけ、山小屋で敦子は戦争中堕落しかけた自分の身の上を語った。しかし、時子が帰ったことを知ると、敦子は発電所をやめて山を去った。早春になって浩輔は東京へ出た時、銀座のキャバレーで敦子の姿を見つけたが、敦子は浩輔の眼をのがれるように姿を消した。しかし、その敦子が突然再び山へ姿を見せ、どうしても浩輔のことが忘れなかったと時子もいる前で告白し、二人の幸福を願ってまた去って行った。そして、その夜雪崩は敦子をその下に埋めてしまったのだった。