戦争で肉親を失った宮島志津子はトランペット吹き吉植松雄の世話で、今は浅草の踊り子として働いていた。ふとしたことから、彼女は大学の助教授波多野俊彦を知った。波多野は志津子に心をひかれ、先輩の日下重吉に彼女を会わせた。日下はその昔、踊り子だった恋人を捨てて、金持の娘と結婚し、今では女房の尻にしかれていたので、志津子に会うのは何か救われたような気持になるのだった。日下の捨てた女、優子は今では浅草で「はの字」というお好み焼き屋をやり、志津子のことも知っていて、何くれとなく彼女を励すのであった。志津子の下宿する家には町工場に働く春江がいて、貧しいなりに幸福な生活を築きあげようと努力をしていた。やがて波多野との間に破綻が起った。二人の住む社会の相違が主なる原因であった。そして彼女は吉植と結ばれ、男の為にストリッパーをするようになった。だが、志津子は吉植の冷い性格を知ってがっかりし、春江を訪れた。そして春江とその働く仲間のむつみ合いを見て、今までの生活に別れを告げようと決心した。吉植は慌てて彼女を引きとめようとするが、もはや志津子はいうことをきかなかった。吉植の手をのがれてアパートの非常階段を降りる時、腐っていた手すりが折れ、彼女は転落して死んだ。波多野は葬式の参列を断り、日下は暗然とし、優子は泣いた。だが志津子は明るい生活の窓をはっきりつかんでいたのだ。