沖縄の話。剛柔流唐手の中里東恩は娘の恒子、息子の克明、弟子の赤田や忍達と唐手術を練っていた。忍は中学で唐手を教えている名越義仙の人物にひかれて、彼の門弟になるべく、東恩のもとを去っていった。その頃、東京で文部省主催の運動体育展覧会が開かれることになり、沖縄の唐手代表として義仙が選ばれた。それを知った東恩は怒った。赤田は陶工湖城空典を訪れ、義仙と決闘するのだから立合人になってくれと頼んだ。義仙の人物を知る空典は一喝して赤田を追い払った。空典はその事情を手紙にして、娘の志那子に持たせて義仙の家にやった。彼女は義仙の家にいる忍と会った。一夜、空典は何者かに襲われ、志那子の唐手による奮闘も空しく傷ついた。ために志那子は芸妓となって家計を助けることになった。宴席で図らずも志那子の踊りを見た義仙と忍は、彼女の踊りの中に唐手の精神が入っているのを見せられた。その帰途義仙達を襲った東恩一味を、義仙の制止もきかず、忍が迎え討ったことから、義仙の怒りを買った忍は破門同様の身となり、空典の家に身を寄せることとなった。忍と志那子はそこで将来を誓い合う仲となった。義仙は東京に向った。ある夜、執拗な赤田達の襲撃をさけて忍は志那子の働く花崎楼に逃げ込み、志那子に明日の船で東京に行くのだと打ち明けた。翌日、忍を探しに志那子の家に来た赤田と恒子は忍がその日東京に向うのを知り、港に急いだ。志那子もまたその後を追った。しかし二組とも間に合わなかった。走る船の甲板上では、忍が一人、茫然として遠くなる港を見つめていた。