原作は島崎藤村の小説である。この映画化は一昨年東宝で企画され、阿部豊演出、高峰秀子、池部良主演でロケーションまで行われたが、争議のため製作を中止した。今回当時の製作者筈見恒夫のあっせんにより、松竹京都が同企画をとりあげることになった。「武装警官隊」「一寸法師(1948)」の小倉浩一郎が製作を担当「大曽根家の朝」「女優(1947)」「夜の女たち」等の久板栄二郎の脚本をそのまま使用、監督は「大曽根家の朝」「女」「肖像」の木下恵介が、松竹の東西一元化による演出家交流の第一陣として、とくに大船から京都へ出張する。カメラは同様大船の楠田浩之。主演は前回の池部良(東宝)と松竹少女歌劇出身で「肖像」にデビューした桂木洋子。その他民芸より「安城家の舞踏会」「わが生涯のかがやける日」の滝沢修、清水将夫、永田靖、宇野重吉、俳優座より「肖像」の小沢栄太郎「颱風圏の女」の東野英治郎「肖像」の東山千栄子、村瀬幸子、それに「女性の勝利」の松本克平が賛助出演、薄田研二も出演する。