〔第一話隠退藏物資の卷〕東北地方のある城下町に住んでいる有名な小説家の石中先生は、今日は郊外のリンゴ園の中に中村金一郎氏や河合勇三君の報告でドラムかん四百六十本が退蔵してあると聞きその摘発に出かけた。始めは大真面目で掘り出していた石中先生はなれていないので、すぐ伸びてしまった。一方中村氏は誠にのんびりしている。河合君はリンゴ園の娘モヨ子ちゃんと青空をながめながら、若い希望を喜び楽んでいる。一人気をもんでいるのはリンゴ園主の山崎さんだけ、何にしろドラムかん四百六十本というから。だが底を割ってみれば、その事実はウソで中村氏が河合君とモヨ子ちゃんの高砂を目論でのデマだったという。ただ最後までそれを信じているのは山崎さんだけだという。 〔第二話仲たがいの卷〕この田舎町にも都会の空気が流れ込み始めた。エロレビューがやってきた。そこで山田書店にビラをかけてくれとやってきたが山田さんが迷っていた、ちょうどその時娘のまり子の許婚男の秀一の父の大原さんがやってきた。せっかくもらった切符がもっ体ないし、それに子供の教育上一応見ようといって二人はすぐに出かけた。処が娘のまり子は母に聞いて驚き、秀一と二人で父親達を訓戒しようとして相談して芝居のハネるのを待っていることにした。ついでに弱点をにぎっておいて何か買ってもらうことを計画したが、形勢が逆転してしまった。というのはわが父はやはりわが父で、秀一の父とまり子の父が、どっちが先にさそったかと大騒ぎになって、まり子と秀一の間もただならぬものとなった。そこに石中先生がユーモアたっぷりの弁舌をもって裁いていくのである。 〔第三話千草ぐるまの卷〕ヨシ子は町の病院に姉のカツ子を見舞いに行った。その時同じ病院に手相をみる素人患者から今日明日中に恋人がみつかると予言される、その帰り道ヨシ子はわが村に行く馬車にゆられて行った。馬車は茶店で休んでいたが、ヨシ子はふとしたことから間違って別の馬車にゆられていた。方角の違う貞作の引く馬車だった、帰えるに帰えれないヨシ子は、その家の人々から暖かく迎えられて宿まることになった、貞作は無口であったがヨシ子に好意をもつようになっていた。その明くる朝ヨシ子は貞作の引く馬車にゆられてわが家に向った。かくして三組の婚礼式が石中先生の媒しゃくによって厳かにあげられた。