大正8年、吹雪の荒れ狂う一月の夜更け、新潟県亀田町の地主で、清酒“冬麗”の蔵元二代目・田乃内意造の長女として烈は生まれた。母の賀穂が病弱であったため、烈の養育は賀穂の妹・佐穂に委ねられた。佐穂の親身な世話で烈はすくすくと成長したが、小学校入学の直前、烈の目が夜盲症といういずれ失明に至る不治の病におかされていることが発覚した。意造はあらゆる治療を試みたが効果はなかった。賀穂は、神にすがろうと越後三十三カ所の巡礼に旅立ち、その先で病に倒れ息をひきとってしまう。烈は佐穂を親代わりに頼りにし、成長していった。そんな折、意造は二十歳以上も年の若い芸妓のせきを後添えにした。烈は佐穂が後添えになるものとばかり思っていたので反発する。居場所のなくなった佐穂は、黙って田乃内家を出るのだった。意造とせきの間には待望の男子が生まれたが、不幸にも事故に巻き込まれて死んでしまう。意造はあまりの衝撃に脳卒中で倒れ、寝たきりになってしまった。生きる意欲をなくし、弱気になった意造は“冬麗”の蔵を閉めると言い出す。しかし、烈は意造に「あの蔵を烈に下さい。烈がお酒造りをしてみせます」と申し出るのだった。意造は酒造りは女の仕事ではないと反対したが、烈は聞き入れなかった。念願かなって蔵開きを迎えることが出来た烈は、蔵人の中に昔馴染みの釜屋の涼太を見つける。しばらく会わないうちに立派な風格を漂わせている涼太に、酒造りのやりとりの中で、烈は自分の中の隠し難い思いを意識するのだった。その年の酒造りが終わり、何も言わず帰って行った涼太を、烈は意造の反対を押し切って訪ねて行った。烈から涼太への思いを打ち明けられた佐穂は、意造に烈と涼太の結婚を許してやるように説得する。意造と烈を思いやる佐穂の言葉を聞いて、意造は改めて佐穂の存在の大切さに気づき、共に生きることを決心するのだった。