1910年、チャールズ・ハワード(ジェフ・ブリッジス)は自動車の将来性に目をつけ、数年後には西海岸で最も成功した自動車ディーラーとなる。ところが、最愛の息子フランキーを15歳の若さで皮肉にも自動車事故で失う。ハワードは失意のどん底に陥り、妻も彼のもとを去っていった。その頃、孤高のカウボーイ、トム・スミス(クリス・クーパー)は、折からの自動車産業の発展によって馬の需要がめっきり減り、食いぶちを稼ぐため西部劇の馬の調教師として各地を転々としていた。一方、カナダでは16歳の少年ジョニー・ポラードが、乗馬の才能を磨いていた。何不自由なく暮らしていた彼だったが、大恐慌時代の幕開けとともに無一文となった両親は、ジョニーの乗馬の才能に将来の夢を賭け、草競馬の世界に愛息を託す。ポラードはその赤毛から愛称《レッド》と呼ばれ、競馬の騎手として身を立ててゆく。6年後、レッド(トビー・マグアイア)は馬上で騎手が殴りあう格闘技にも等しい過酷な地方競馬のレースにいた。しかし彼が手にする賞金はごくわずか。仕方なく、アマチュア・ボクシングの試合で生活費を稼ぐ日々だった。1933年、時は禁酒法下、多くの人々がメキシコのティファナに歓楽を求めて押しかけていた。酒、女、そして競馬。ハワードもそんな男のひとりだった。そこで彼はマーセラ(エリザベス・バンクス)という若く美しい女と電撃的に結婚。乗馬の愛好家であるマーセラの影響もあり、やがてハワードは競馬の世界にその身を投じてゆく。そんなある夜、ハワードは森で、骨折した馬を治療しているスミスを見かける。「けがしたからといって、命あるものを殺すことはない」と呟く彼に感銘を覚えたハワードは、馬の調教師としてスミスを雇うことにする。3ヵ月後、ニューヨークのサラトガ競馬場で、スミスは、《シービスケット》と呼ばれる鹿毛の馬の目に、言いしれぬ資質が潜んでいることを見抜いた。気性の荒いこの馬は、数多くの調教師からさじを投げられていた。しかしスミスは、ハワードにシービスケットを購入するよう勧める。そしてスミスは、競馬場でまさに“暴れ馬”さながら大喧嘩していたレッドに、騎手として目をつける。レッドはこのサラブレットから記録的な走りを引き出し、シービスケットは連戦連勝。困窮に苦しむアメリカの庶民たちは、小柄ながらも逆境に立ち向かうシービスケットの活躍に、時代のヒーローとして熱狂的な歓迎ぶりをみせる。意気揚がるハワードは、史上最高額の賞金10万ドルのレースを決行する。果たしてレースはシービスケット優位のまま進むが、レッドは右後方から迫ってきた馬の存在に気づかず、まんまとゴール前で逆転されてしまう。実はそのとき、ボクシング時代の怪我の後遺症で、すでにレッドの右目の視力は失われていたのだった……。