1960年代初頭のパリ。モモ(ピエール・ブーランジェ)は、ブルー通りのアパルトマンで父(ジルベール・メルキ)と暮らす13歳のユダヤ人の少年。母は、モモが生まれてすぐ兄のポポルを連れて家を出て以来、まったくの音信不通。その寂しさもさることながら、優等生だったというポポルと比べられ、父から小言を言われることが、モモにはうっとうしくて仕方がない。そんなモモの目下の最大の関心事は、はやく初体験をすませること。毎日、アパルトマンの窓から娼婦たちの姿を眺めながら、誘い方の練習に励むモモ。「今日こそは」と意を決した彼は、貯金箱の小銭を持って、通りの向こうにあるトルコ移民の老人の食料品店へ両替に行った。店主のイブラヒム(オマー・シャリフ)には、両替の目的はお見通し。だが彼は、黙ってモモに札を手渡した。その35フランを握りしめ、通りに戻ったモモは、16歳だと年齢をごまかして娼婦を誘うことに成功。晴れてオトナの仲間入りを果たす。それからしばらくして、ブルー通りに映画の撮影隊がやって来た。近所の人たちや娼婦に交じって、モモも撮影を見学。イブラヒムの店では、女優(イザベル・アジャーニ)が買い物をした。イブラヒムが水を5フランで売りさばくのを見て、「ぼったくりだね」と声をかけるモモ。するとイブラヒムは、「君がくすねた分を取り返さなくちゃ」と言った。彼は、モモが毎日のおつかいのついでに、缶詰を万引きしているのを知っていたのだ。「ちゃんと弁償するから」と、しどろもどろになるモモに、「弁償しなくていい。でも、盗みを続けるならうちの店でやってくれ」と答えるイブラヒム。モモ宅の家計の苦しさを知っている彼は、余ったパンをあぶって食べる方法や、コーヒーにチコリを混ぜる方法、ティーバッグを乾かして再利用する方法をモモに教える。そんなイブラヒムに、モモは、父親からは得られない大きな愛情を感じるのだった。モモがイブラヒムに教えてもらったことのなかで最も役に立ったのは、笑顔で幸せをつかむ方法だった。数学の授業で問題が解けなくて困ったとき、いくら誘っても相手にしてくれなかった娼婦を口説くとき、笑顔はとても役に立った。だが、父にこの手は通用せず、笑顔を向けても「歯列矯正が必要だ」と言うばかり。ガッカリしたモモは、「僕がポポルならパパに愛されたのに。ポポルはママに笑い方を教わったはずだ」と、イブラヒムに寂しい胸中を打ち明ける。そんなモモを、「ポポルよりも100倍、君のことが好きだ」と言ってなぐさめたイブラヒムは、「足は取り替えることができないから」と、モモに靴を買ってくれた。そんなある日、失業したモモの父親が、わずかな持ち金と置き手紙を残し、家を出て行った。父に捨てられた悲しさと、束縛から解き放たれたうれしさが入り交じった複雑な思いにかられるモモ。彼は、同じアパルトマンに住むミリアム(ローラ・ナイマルク)という少女と交際を始めるが、まもなく彼女の気持ちは別の少年に移っていった。生まれて初めての失恋を体験したモモに、イブラヒムは、「彼女への愛は、永遠に君のものだ」と優しく言葉をかける。まもなく、モモの家に悲しい知らせを持って警官がやって来た。父が、マルセイユ郊外で鉄道自殺をはかったのだ。 数日後、ひとりの女性がモモの家を訪ねてくる。彼女は、モモが生まれてから一度も顔を見たことのない母親(イザベル・ルノー)だった。「迎えに来た」と言う母に、「自分は留守番のモハメッドだ」と答えるモモ。そのとき初めて、彼は、自分が母の不倫によって生まれた子供であること、そして、ポポルという兄などいないことを知る。母が去っていったあと、イブラヒムの店を訪ねたモモは、「僕を養子にして」と頼む。この申し出に、イブラヒムは大喜び。そんなふたりの前には、人種と血縁の壁が立ちはだかったが、それをなんとか乗り越えて、晴れてモモはイブラヒムの息子になった。しばらくして、赤いスポーツカーと運転免許を手に入れたイブラヒムは、モモを連れて故郷のトルコへ帰ろうと決意する。フランスからスイス、アルバニア、ギリシャをめぐる旅を通じて、本物の親子のように心を通わせていくふたり。モモを自慢の息子だと人々に紹介するイブラヒムは、「幸せだよ、モモがいてコーランの教えがある」と言いながら、特上の笑みを浮かべる。やがてトルコに到着したふたりは、イブラヒムの故郷の村をめざすが……。