1940年、パリ。ある大雨の晩、名声と社会的地位を手に入れた美しき女優ヴィヴィアンヌ(イザベル・アジャーニ)は、しつこくつきまとう男、アルペルを誤って殺してしまう。彼女は小説家を目指す幼なじみのオジェ(グレゴリ・デランジェール)に助けを求めるが、遺体を運ぶ途中に事故を起こし、容疑者として逮捕されてしまう。ヴィヴィアンヌは真相の発覚とスキャンダル恐れるが、彼は取調べで決して口を割らなかった。数ヶ月後の6月14日。ドイツ軍の侵攻によりパリが陥落。フランス政府と民衆が大挙してボルドーへ疎開に向かう中、ヴィヴィアンヌは自分の身代わりとなったオジェの存在に後ろ髪を引かれつつも、愛人となった大臣ボーフォール(ジェラール・ドパルデュー)の権力を利用してパリを脱出する。一方、刑務所に収監されていたオジェは、同じく囚人のラウル(イヴァン・アタル)と共に脱走に成功。ヴィヴィアンヌを追ってボルドーへと向かう。列車で知り合った女子学生カミーユ(ヴィルジニー・ルドワイヤン)と、彼女の恩師、コポルスキ教授(ジャン=マルク・ステーレ)の助けを得て、やっとボルドーに到着したオジェ。街中で偶然にもヴィヴィアンヌと再会を果たすが、その素っ気ない態度に憤りを感じる。彼女が宿泊するスプレンディッド・ホテルに押しかけたものの、政府関係者や裕福なブルジョア階級、上流社交界の人々が溢れ返ったロビーではゆっくり話も出来ない。皆、自分の寝場所を確保するために躍起になっていた。殺人の真相を聞き出そうとするオジェに、ヴィヴィアンヌは彼が犯人として逮捕されたと聞き、卒倒し、泣き暮らしたことを告げる。「信じる?信じてないわね」ヴィヴィアンヌの言葉に心惑わされるオジェ。そんな2人を、ヴィヴィアンヌに好意を寄せる英国人ジャーナリストのアレックス(ピーター・コヨーテ)が遠巻きから見つめていた。オジェをヴィヴィアンヌの幼なじみだと知ったボーフォールは、彼を閣僚の食事会へ誘う。しかし同じレストランに居たアルペルの甥に罪を追求されたオジェは、人々の制止を振り切り、窓を割って街へ逃げ出す。オジェが脱獄囚だと隠していたヴィヴィアンヌにボーフォールは怒り、警察の捜索隊を派遣させる。ドイツ軍の侵攻を目前に、フランス政府は戦争維持派と反対派に分かれていた。国の命運を閣僚が決めかねている中、コポルスキ教授とカミーユはボーフォールに重要機密を打ち明ける。彼らが保管する“重水”は原爆の元となる化学物質で、ドイツ軍に見つかる前にイギリスへ持ち出すつもりだと言うのだ。海外脱出に向けて協力を求めるコポルスキ教授だが、ボーフォールは休戦協定の切り札に重水を使おうと企むのだった。その頃、アルベソー夫人(エディット・スコブ)の宿に身を潜めていたオジェのもとに、疲れきったヴィヴィアンヌが訪ねてくる。田舎町で共に育った懐かしい思い出を語り合う二人。今は立場が違うヴィヴィアンヌに、オジェは変わらぬ愛を打ち明ける。「一緒に逃げよう」「どこへ?」「分からない、遠くへ」「遠く…」。海外への脱出を図るコポルスキ教授とカミーユは、ボーフォールの命令で重水を回収しにきたフランス警察に逮捕されかかる。間一髪、通りかかったラウルの活躍で逃げ出すことに成功するが、重水を狙うドイツ軍スパイの手も確実に迫りつつあった。同じ頃、ヴィヴィアンヌと共に亡命を考えていたオジェは、最後までボーフォールに頼ろうとする彼女に叫ぶ。「君は誰も愛さない。自分さえも!」。オジェを救うため、ヴィヴィアンヌはパリの殺人事件の真犯人が自分であることを、涙ながらにボーフォールに告白するが……。