一人の老人が最期の時を迎えようとしている。ジョン・“ドク”ブラッドリー。1945年、衛生兵として硫黄島の戦いに赴き、そこで撮られた一枚の写真によって英雄と讃えられた男だった。しかし彼は戦争について、写真について沈黙を守り通した。それは何故だったのか?彼の息子が今、真実を辿り始める……。硫黄島に上陸したアメリカ軍は予想をはるかに上回る日本軍の反撃に遭い、苦戦を強いられていた。そんな中、山の頂上に翻った星条旗。その一枚の写真がアメリカ中を熱狂させ、旗を掲げている六人の兵士たちを英雄に祭り上げた。しかし戦闘から生還できたのは三人だけだった。ドク(ライアン・フィリップ)、アイラ(アダム・ビーチ)、そしてレイニー(ジェシー・ブラッドフォード)だ。祖国に帰った三人は政府の戦時国債キャンペーンに担ぎ出される。熱狂的な歓迎を受ける三人。しかし英雄扱いされればされるほど彼らの苦悩は深くなっていった。凄惨な戦場体験とのギャップ、例の写真が英雄的行為とは程遠いものであったという真実、そして実際に写っている兵士と英雄視された兵士の取り違え。特に感情的なアイラは酒に溺れていった。見かねた上官はアイラを戦場に送り返してしまう。レイニーも結婚を機にキャンペーンから外れ、最後にはドク一人が残った。この体験は三人のその後の人生にも深い影響を残した。アイラは不安定な生活を送り続け、ある日酔いつぶれた状態で死亡していた。レイニーはキャンペーンの伝を頼って就職しようとしたが既に過去の存在と見なされ、うだつの上がらぬままに一生を終えた。ドクは地道に葬儀屋を営み、残りの人生を家族に捧げた。そして今、その息子が硫黄島と写真にまつわる事実を調べ上げた。臨終の床で父は、一人の忘れられない兵士の話をした。その兵士の一番の思い出、それは束の間の平和な時、仲間たちで海に入り少年に戻ったようにはしゃぎまわった時の幸福な記憶だった。