パリ郊外の小さな町ヴァルモンドワ。名のある画家であった大叔父ポール・ベルティエが生前使っていた邸宅にひとり住む母エレーヌ(エディット・スコブ)の誕生日を祝うため、三人の子供たちとその家族が集まっている。経済学者の長男フレデリック(シャルル・ベルリング)、世界中を飛び回るデザイナーの長女アドリエンヌ(ジュリエット・ビノシュ)、中国で仕事をしている次男ジェレミー(ジェレミー・レニエ)。だが、久しぶりの楽しい時間にも関わらず、母はしきりに美術品の行く末を気にかけていた。自分が死んだら家も美術品も売ってほしいと頼む彼女に、フレデリックは、何も売らず子供たちが受け継ぐと苛立ちながら答える。次は大叔父の回顧展で集まることを約束し、エレーヌは慌しく帰りを急ぐ子供たちを見送った。その一年後、回顧展のあとに訪れた突然の母の死。悲しみに浸る間も無く、三兄妹は家と膨大な美術品という母の遺産と向き合うこととなる。フレデリックはそれらを手放すつもりはなかったが、アドリエンヌはアメリカ人の恋人ジェームス(カイル・イーストウッド)との結婚を決め、ジェレミーも中国に生活の拠点を移し、現地での住宅購入の意思を告げる。遺産を相続するには莫大な相続税がかかり、家も家族が集まる場所ではなくなるのだ。三人は家を売却、美術品をオルセー美術館に寄贈することで合意し、後日、美術館の職員たちが家から全てを持ち去っていった。がらんどうの家を一人訪れたポールの生前からの家政婦エロイーズ(イザベル・サドワイヤン)は、亡き主の好きだった花を墓前に捧げる。そんなある日、家を譲り渡す前にフレデリックの長女シルヴィー(アリス・ド・ランクザン)が、大勢の友人を招いてパーティーを開くことになった。爆音の音楽がかかる中、彼女はボーイフレンドを祖母との思い出が詰まった庭にこっそり連れて行き、何もかもなくなっていくと涙をこぼすのだった……。