”人がいい”ことだけが取り柄の青年・石井久は、東京・西新宿のオンボロアパートに独り暮らしをしている。写真家を夢見て九州から上京し専門学校にも通ったのだが続かず、ビルのガラス・クリーニングの仕事も同僚との喧嘩が原因でクビになってしまった。収入が途絶えた彼は、ある日、万引きの常習犯の主婦・桝井ちか子に行方不明の息子・勝を探して欲しいと頼まれる。人探しなどしたことのない久はその申し出を一度は断るが、背に腹は代えられぬとばかり仕事を引き受けることにした。しかし、勝の手がかりは彼が幼い頃にハーモニカで吹いていた「港」という曲だけ。半分やけくそでFMラジオのDJ・マキに曲をリクエストしてみるも、消息がつかめる筈もない。ところが久が勝探しを諦めかけた時、勝の方から久の前に姿を現したのである。久は勝に家へ帰るように忠告するが、逆に勝に報酬の前金をナイフで脅され巻き上がられてしまう。その上、勝は家に帰らずに久につきまとい始める始末。関わりたくないと思いながら、久はいつしか勝のペースに巻き込まれていく。そんなある日、彼はマキから不倫相手の男を殴ってきて欲しいという依頼を受ける。金の為に仕事を引き受ける久だったが、偶然現場に居合わせた警官にご用となって大騒ぎ。そこへ現れた勝が彼を助けてくれたものの、警官の銃を奪って逃げたことから更に騒ぎは大きくなってしまう。ふたりが向かったのは新潟の港。ロシアで札幌ラーメンのチェーン店を開くことが夢だと語る勝は、そこからロシアへ渡るつもりなのだ。しかし、久の手錠を車のホイールで切断中、ジャッキが外れて勝は大怪我を負ってしまう。結局いつになってもロシア船は来ず、久は怪我をした勝を連れて東京へ戻ることになる。だが、東京で彼らを待ち受けていたのは、張り込み中の警官だった。ちか子に勝を引き渡そうと連絡をとった久は、その直前に警官たちに逮捕されてしまう。それから数日後、釈放されてアパートに帰ってきた久は運転代行の仕事に就き、心機一転真面目な生活をスタートさせようとしていた。ところが、怪しげな男・満に車をめちゃめちゃにされ、またもクビの危機にさらされてしまう。そして、これが久と満の出会いであった。