FBIのジョン・エドガー・フーバー長官(レオナルド・ディカプリオ)は、人生の終盤に差し掛かり、部下に命じて回顧録を書き取らせる。記憶はFBI誕生以前へと遡り、彼の表の経歴が語られるとともに、その裏側の野望、企み、葛藤、苦悩が次第に明らかにされていく……。20世紀の半分を占めるおよそ50年もの間、アメリカで大統領さえも及ばない強大な権力を手にしていた男。そのたった一人の人間が、アメリカのあらゆる秘密を掌握し、国さえも動かしていたという事実。50年間に入れ替わった大統領は8人にのぼり、その誰もが彼を恐れた。それが、ジョン・エドガー・フーバーFBI初代長官である。20代でFBI前身組織の長となり、以後、文字通り死ぬまで長官であり続けた。今日では当たり前とされる科学捜査の基礎を確立し、犯罪者の指紋管理システムを作ったのも彼なら、FBIを子どもたちの憧れの的にまで押し上げたのも彼だった。紛れもない英雄であるにもかかわらず、彼には常に黒い疑惑やスキャンダラスな噂がつきまとった。やがて、国家を守るという絶対的な信念は、そのためになら法を曲げてかまわないというほど強く狂信的なものとなる。それゆえ彼は正義にもなり、悪にもなった。国を守るという大義名分のもと、大統領を始めとする要人たちの秘密を調べ上げ、その極秘ファイルをもとに彼が行った“正義”とは一体何だったのか?映画やコミックを使ってFBIの素晴らしき喧伝させる裏側で、彼は何を画策していたのか……?あきなく高みを目指した男の深い心の奥底が描かれる……。