自らも写真家であるヴィム・ヴェンダース監督は、ある日、住む場所を追われ難民となったトゥアレグ族の“盲目の女性”が写された一枚の白黒写真に出会う。写真が持つ底知れないパワーに深く心を揺さぶられたヴェンダースは、この作品を手掛けた写真家セバスチャン・サルガドに強く惹かれていく……。1944年、ブラジルに生まれたサルガドは、60年代、軍事独裁に反対する闘争による迫害を逃れパリに渡り、フリーランスの写真家として世界中を飛び回りプロジェクト作品を発表、その後、数多くの賞を受賞し、後進たちに計り知れない影響を与え続けている。世界的な報道写真家であり環境活動家でもあるサルガドが2004年から始めたプロジェクト「Genesis(ジェネシス)」は、ガラパゴス、アラスカ、サハラ砂漠などを巡り撮影、熱気球から撮られた水牛の群れ、遊牧民のネネツ族のシベリア横断、サンドイッチ諸島でのペンギンの楽園など、生と死が極限に交わる誰も見たことがない圧巻の風景が写し出されている。“神の眼”とも呼ばれる奇跡的な構図、モノクロを基調とした荘厳なまでに美しい作品の数々を彼はいかにして撮りつづけてきたのか。ヴェンダースは、サルガドの息子ジュリアーノの協力を得て、サルガドの撮影に同行、この唯一無二の写真家の足跡を解き明かしていく……。