都心に張り巡らされた高速道路の下。橋梁のコンクリートに耳をぴたりと付けた篠塚アツシ(篠原篤)が、ハンマーでコンクリートをノックする。機械よりも正確な聴力を持つ彼の仕事は、音の響きで破損場所を探し当てる橋梁点検。しかし、彼は数年前に愛する妻を通り魔殺人事件で失い、今では健康保険料も支払えないほど貧しい生活を送っていた。妻を殺した犯人を極刑にすることだけを生きがいにしてきたアツシだが、親身になってくれる弁護士はいない。次第に社会そのものに恨みを抱くようになった彼はある日、破滅的な行動を起こしてしまう……。東京近郊。高橋瞳子(成嶋瞳子)は自分に関心を持たない夫・信二郎(高橋信二朗)と、そりが合わない姑・敬子(木野花)と3人で暮らしている。同じ弁当屋に勤めるパート仲間と共に皇室の追っかけをすることと、小説や漫画を描いたりすることだけが楽しみな平凡な日々。だがある日、パート先で知り合った取引先の男・藤田弘(光石研)とひょんなことから親しくなり、次第に瞳子は藤田に惹かれていく。やがて養鶏場の経営を夢見る藤田に誘われた瞳子は家を出る決意をするが……。企業を対象とした弁護士事務所に務める四ノ宮(池田良)は、エリートである自分が他者より優れていることに疑いを持たない完璧主義者。高級マンションで同性の恋人・中山(中山求一郎)と一緒に暮らしているが、実は学生時代からの親友・聡(山中聡)を秘かに想い続けていた。そんな中、些細な出来事がきっかけで四ノ宮と聡の間に微妙な亀裂が生じ始める……。