イギリスの小さな地方都市に暮らす夫婦、ジェフ(トム・コートネイ)とケイト(シャーロット・ランプリング)は、結婚45年になる。子供はおらず、仕事を引退した今はささやかな日常を送っている。土曜日に結婚45周年祝賀パーティを控えた月曜日、ジェフに一通の手紙が届く。50年以上前、雪山でジェフの恋人カチャがクレパスに落ち、行方不明となっていた。しかし温暖化により雪が溶け、当時の姿のまま発見されたので遺体確認に来てほしいというスイスの警察からの手紙だった。ジェフが「ぼくのカチャ」と不用意に口にしたとき、二人の日常に変化が訪れる。ケイトに事情を説明するジェフは目の前の妻の存在を忘れ、上の空となっている。ケイトは家の中に冷たいものが入り込むのを感じる。祝賀会の下打ち合わせに出掛けたケイトは、時計店でスイス製の高級時計を見つける。45周年の記念に夫にふさわしいと思い、家に電話を掛けるが、夫は出ない。何かに気を取られて電話に出られないのだと察し、ケイトの気持ちに陰りが生まれていく。ケイトが家に戻ると、ジェフはいつもの夫に戻っていた。しかし夕食の席で、ジェフはケイトにカチャとの出来事を語り出す。警察には夫婦と言ってあり、カチャはおもちゃのような指輪を左手の薬指にしていた、と。ケイトは余裕の表情でやり過ごすが、内心は話を切り上げたくて仕方なかった。ケイトは存在しない女への嫉妬心を重ねていき、夫へのぬぎいきれない不信感を募らせていく……。