2006年、大阪・泉南地域の石綿(アスベスト)工場の元労働者とその家族が損害賠償を求め、国を相手に訴訟を起こす。泉南は明治の終わりから石綿産業で栄え、最盛期は200以上の工場が密集し“石綿村”と呼ばれていた。石綿は肺に吸い込むと長い潜伏期間を経て、肺ガンや中皮腫を発症する。国は70年前から調査を行い、健康被害を把握していたにもかかわらず、経済発展を優先し規制や対策を怠っていた。その結果、原告の多くは肺を患い、発症に怯えて暮らしていた。本作は8年にわたり、弁護団の活動や、自らも石綿工場を経営していた『市民の会』の柚岡一禎の調査に同行し、裁判闘争や原告らの人間模様を記録した。原告の多くは地方出身者や在日朝鮮人で、劣悪な労働条件の下、対策も知らされぬまま働いていた。彼らは裁判に勝ってささやかな幸せを願うばかりだったが、国は控訴を繰り返し、長引く裁判によって彼らの身体は蝕まれていく……。