ドン・バーナム(レイ・ミランド)は33歳、大学時代から小説家になるつもりで、中途退学してニューヨークに飛び出してきたのだが、学窓の天才も世に出てはいっこうに小説が売れない。売れなくとも書いているうちはよかった。書けなくなってきて、焦慮をまぎらそうと一杯の酒を飲んだのが諸悪の始まりで、どうやらアルコール中毒になってしまったらしい。弟思いの兄ウィック(フィリップ・テリー)のアパートで兄弟は二人暮らしで、何から何までドンは兄まかせである。十日ほどの酒びたりからやっと目覚めた弟を、ウイックは田舎へ連れて行って週末4日間なりとも健康生活をさせようと企画する。出発の準備の最中、ドンの恋人ヘレン(ジェーン・ワイマン)が訪ねて来る。彼女が音楽会の切符を二枚持っているというと、ドンは3時の列車の予定を6時半の列車に延ばし、無理に兄を彼女に同伴させる。しかし酒は一滴もない、金も一文なし、どの酒屋も現金でなければドンには酒を売らない。そこへ給金を貰いに来た掃除女との扉ごしの問答で、給金10ドルの隠し場所を知ったドンは、彼女をごまかして追い返し、それをネコババ。すぐ安酒を2本買い、ついでにナットの酒場に寄るのだった。飲んだくれたドンは時間に遅れ、ヘレンに会わないようにしてアパートへ帰る。兄は怒って、一人で田舎へ行ってしまった。買ってきた酒の1本を電燈のかさの裏に隠し、もう1本を飲んでドンは寝る。翌日、朝からナットの酒場へ行き、ドンはヘレンとの恋物語を始める。3年前、オペラでレインコートの預かり札の間違いで知り合い、恋仲となったこと。恋は不思議なもので、酒を断つことができたこと。彼女の両親が娘の恋人に会いにニューヨークへ来たこと。失業の身で昔気質の老人たちに会うのが気恥ずかしく、電話で時間が遅れると断って1杯飲んだこと。そして飲んだくれ、彼女に正体を見せたこと。しかしドンに首ったけのヘレンは彼を見限らず救おうとして、以来約3年の間むなしい努力を続けていることを話す。ドンは、帰って小説を書き始める。タイトルは『酒びん』ドン・バーナム作、ヘレンに贈る。しかし後は一行も書けない。酒が飲みたいが、金はない。ドンは無一文で初めての酒場で飲み、ハンドバックをスリ損なって店を放り出される。タイプライターを売ろうとすれば、ユダヤ人のヨム・キッパー祭日で、質屋は全部休み。顔見知りの女給グロリアから5ドル借りるが、階段から落ちて気絶する。気が付くとドンは、アルコール中毒患者収容所にいる。しかしドンは、医師のコートを盗んでアパートへ逃げ帰る。部屋の中で幻覚におびえているところに、ヘレンが来る。彼女の介抱でその夜は眠るが、翌朝はヘレンがオーバーを質に入れ、ピストルを出してくる。しかし、ドンは自殺はしなかった。ヘレンの愛で酒飲みのドン・バーナムは死んだが、作家ドン・バーナムはこれからは大いに書くだろう。