監督のピーター・ジャクソンは、400人以上のアーティストを動員し、2200時間以上に及ぶモノクロ、無音、経年劣化が激しく不鮮明だった100年前の記録映像に、修復、着色、3D化という3段階の作業を実施。修復作業にはバラバラのスピードで撮影されていた古い映像を現代の24フレームに修正するため、足りないフレームを作成するなど、今までにない最新のデジタル加工を施した。また、当時は録音技術がなかったため、BBCが所有していた600時間以上に及ぶ退役軍人たちのインタビューのほか、兵士たちが話す口の動きを読唇術のプロが解析した言葉や効果音を用いて、元々無音だった映像に音声を追加。まるで魔法をかけられ、命を吹き込まれたかのように1本の映画として蘇った。映し出されるのは、戦車の突撃、爆撃の迫力、塹壕から飛び出す歩兵たちなど、過酷な戦場風景ばかりではない。リラックスした表情で食事や休息を取る日常の様子など、徹底的に兵士の日々に寄り添い、死と隣り合わせの状況でも笑顔を見せる兵士の姿が印象に残る。これまで遠い過去の話としてしか捉えられていなかった第一次世界大戦。その戦場が鮮やかにスクリーンに蘇り、普通の青年たちが目にした戦場に、見る者を誘う。