イングランド国王ヘンリー8世(ロバート・ショウ)は、若く精力旺盛であった。彼は王妃キャサリンと離婚し、王妃の侍女であるアン・ブーリンとの結婚を考えていた。しかしローマ・カトリックが国教であるイングランド国王の離婚には、ローマ法王の許しを得なければならなかった。王の2度目の結婚を法王に弁護できる者は、サー・トマス・モア(ポール・スコフィールド)をもって他にないと考えられた。モアは王の高等評議会の一員で信仰心あつく、ヨーロッパ中の人々から愛されていた。ある時、モアがチェルシーの領地で、妻のアリス(ウェンディ・ヒラー)、娘のマーガレット(スザンナ・ヨーク)や友人たちとの宴を楽しんでいると、ウォルジー枢機卿(オーソン・ウエルズ)からの使いが来て、ハンプトン宮殿へ召喚された。枢機卿はモアに、ヘンリー8世と王妃の離婚を法王が承認するよう取りはからうように依頼する。しかしモアはそれを拒否した。1年後、ウォルジー枢機卿は王の離婚実現に失敗し、大寺院で寂しく死んだ。ある夜ヘンリー8世がモアの館を訪れた。今や大法官の地位に就いているモアは、王に忠誠こそ誓ったがローマ・カトリックへの信仰から王の離婚に決して賛成しなかった。間もなく評議会がカンタベリー大寺院で招集され、国王はローマ法王に対する忠誠を放棄し、自ら英国教会の主となることが発表された。そうして王はキャサリンと離婚し、アン・ブーリンと結婚式を挙げた。大法官の地位を躊躇なく棄てて、一市井人として静かな生活を送っていたモアだったが、ヘンリー8世が発布した国王至上法に反対したため、大法官秘書クロムウェル(レオ・マッカーン)の策により、査問委員会にかけられる。遂にモアは反逆罪で逮捕され、ロンドン塔に幽閉された。やがて彼はウエストミン・ホールの裁判にて死刑宣告を受ける。モアは長い沈黙を破り、こう宣言した。「私は王の忠実な召使いとして死にます。だが王よりも第一に神のために死ぬのです!」と。