抗えない人間の業

今年のアカデミー賞で作品賞他13ノミネートを果たして、助演女優賞と歌曲賞を受賞したシャック・オディアール監督作品で、メキシコである弁護士が、麻薬カルテルのボスに呼び出されて、性転換して別人になる手配を依頼されて、別の死体を用意して、死んだことにして手術も成功して、四年後にロンドンで再会して、今度は生き別れた妻と二人の子供に会う手配を依頼される、というお話しで、スイスに逃げ延びていた母子をボスの親戚ということで呼び寄せて、いろいろ世話を焼くけど、妻は初めて会う親戚という女のことを信用できずにいるなかで、元ボスと弁護士はメキシコで女性支援するNGOを立ち上げて成功を収めるけど、不信感が拭えない妻は、新たな恋人とあることを企む、というお話しは、かなり異色ながらも、それを全編ミュージカルとして描いているのが面白く、主人公の女になりたかった願望をどうしても叶えたい、という思いと、自分の子供に対する捨てきれない愛情の両方を得ようと考えてしまう、という抗えない人間の業を描いているのが良く、弁護士や妻、といったそれぞれのキャラクターも面白いですが、個人的には、歌曲賞を受賞した”El Mal “よりもセリーナ・ゴメスが歌う”Mi Camino“が印象的でしたね。