母の車、車が母。

フィリピンから現れた異才ティミー・ハーン監督による2018年作品。母親が黒魔術により自らの命を愛車に捧げて、自分にプロバスケ選手として活躍する運命を授けて死んだ特異な出自の主人公マイケル・ジョーダン・ウリリ。華麗なバスケ技による活躍を期待されるも、チームのコーチ親子の陰謀や膝の故障、恋人の妊娠などで道を踏み外していく…

マジックリアリズムのような摩訶不思議な映像世界と聖俗が混濁するストーリーに飽きることなく没入した。とはいえ、シェイクスピアならマンリケ一族との因縁をクライマックスに盛り上げる展開を用意するところ、ウリリは母の胎内に回帰するが如くギャランΣの中に入って物語は終わってしまい、なんだかもったいない印象が残る。