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鑑賞日 2025/04/12  登録日 2025/04/12  評点 70点 

鑑賞方法 テレビ/無料放送/J:COM BS 
3D/字幕 -/-
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硬直して,転がる

拝一刀(若山富三郎)はいつでも強張っているように見える.笑顔を見せたことがあるのだろうか.特別な介錯人として数多くの人間を殺めてきた業を背負っているのか,死刑執行マシンと化してしまったのか,とにかく固まったような顔で,剣の腕を振るい,子を連れた道中でも多くの人々を斬っていく.
刀を振るうばかりではなく,剣を投げ,薙刀のような槍のような長い物も操って,切り,刺し,殺す.相手は,血を吹き出す.手が足がちょん切られる.額を割られ血を流す.こうした惨劇は,拝の日常なのだろうか,それとも彼の荒唐無稽な欲望なのか,戯画的でもある.そして大五郎の笑顔がかえって場を不気味にしてもいる.車を片手で押している拝がいる.雨が降っても車に覆いをして動じない.彼には刺客の柳生たちに対し,自らが刺客となって復讐するという使命があり,そのために進んでいるらしい.それにしては,各地を転々として,その場その場で殺人を請け負いながら,大五郎と二人して生きて,歩いている.
女が現れる.序盤,なぜか片乳だけを見せる女が二人ほど続けて現れる.この導入が両乳への欲望を誘いながら,その欲望はお仙(真山知子)とまぐわう拝となって成就する.場所は郷森というらしい.湯治場であり,湯気が立っている.官兵衛(関山耕司) ら悪者たちが強制したとはいえ,お仙や拝も愉しんでいる様も伝わり,この隠微さが拝の硬直や暴力とも交わり,奇妙な感動を引き起こす.
終盤,ある宿場の往来で暴力が殺列する.坊主が「なんまいだ」を繰り返し唱え,地獄のような,あるいは浄土への希求のような効果を発揮する.大五郎は既に死に,その弔いのために棺桶がわりの車を引いて拝は地獄を彷徨っているようにも見える.拝も死んでいるのではないだろうか.そう考えた時,拝の姿は普遍的な存在に,罪と罰を輪廻のように繰り返し続ける魂に昇華する.車輪を回すために拝は運動をしているようにも感じられる.ところで拝(おがみ)が転んで狼(おおかみ)となったらしい.