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野良犬(1949)
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野良犬 戦後間もない1949年の黒澤明監督作品。拳銃を盗まれた刑事が犯人を追い求める話で、後の刑事ドラマのお手本となった作品であるにもかかわらず、さすが黒澤明、オリジネーターとして、後年の作品は模倣にすぎず、本作を凌駕するものはない。突っ走ろうとする若手刑事村上(三船敏郎)とそれを抑えるしたたかなベテラン刑事佐藤(志村喬)のコンビの素晴らしさも後年の数多くの刑事ドラマの設定として使われている。 冒頭の激しく息遣いする野良犬のアップは導入として衝撃的であるが、僕はモノクロでありながら、後年の黒澤明の絵コンテの強烈な色彩を感じた。そして、主人公村上刑事が拳銃を追い求めて、街をさまよう。実際の焼け跡、闇市で隠し撮りをした効果が抜群で生々しい迫力ともに、延々続くシーンにより、刑事の捜査の必死さが伝わってくる(実は、黒沢の盟友「ゴジラ」の本多猪四郎がB班として撮影したらしい)。また、当時の記録的価値として、プロ野球がまだ1リーグ制で、巨人対南海の実際のゲームが舞台として登場し、野球の神様、川上哲治選手がバッティングを見せてくれるのも、貴重である。さらに、戦後まもなくで、警察も戦前をまだまだ引きづっており、「オイコラ」の高圧的な捜査がまかり通っているのも、今となっては興味深い。後、映画技術的には、編集が素晴らしく、まったくの無駄がなく、テンポがいい。特に、犯人が潜むホテルで張り込むシーンの電話とラジオからの音楽を巧みに使ったサスペンスの盛り上げは、シナリオ(当時新人の菊島隆三との共同脚本)のアイデアの素晴らしさとそれを具現化する黒澤演出がさえわたっている。そして、追跡シーンに穏やかで優雅なピアノ曲を流し、泥まみれの格闘シーンが花畑の中でくり広げられるといった正反対のものを組み合わせる対位法の効果は、映画史上に残るものである。 演者については、三船敏郎の動的な演技が凄まじい。特に、銃撃された佐藤刑事の無事を病室前で祈るシーンの迫力は、今見てもこんな俳優は見たことがない。チョイ役で伊藤雄之助や千秋実が出ているのもうれしい限り。 若き日の黒澤明の才能に満ち溢れたエネルギーを感じることができる作品が見られて、元気をもらった。やはり、映画は多大なエネルギーを要求されるものであることを実感する。
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