射撃練習を終えた村上刑事はコルト式けん銃に弾を装てんして無雑作に私腹の上着のポケットにねぢこんだ。彼は連日の活躍に大分疲労を感じながらバスに乗り帰途についたが、途中のバスの中で一大事が起った。それは彼のピストルが盗まれたのである。ポケットに手をやった時はすでに遅く、周囲の怪しい奴が降りたのですかさず後を追ったが残念ながら姿を見失ってしまった。真夏の午下がりの出来事であった。彼は早速警視庁捜査第一課の中島警部に事情を訴え出たが、そのピストルの中には七発の実弾が入っており、事の重大さに今更ながら若い村上刑事は当惑するのであった。 何分の処分が決まるまで、じっとしているわけにもいかないので、中島係長のアドバイスでスリ係の老刑事市川に相談する。すると鑑識課の手口カードを調べて当時の様子を分析したところ、市川刑事の知っているスリのお銀が捜査線にあがった。気のはやる村上刑事は、市川刑事とお銀の巣へ乗り込んだ。お銀は最初しらばくれていたが、強引な村上刑事の食い下がりにしびれを切らして、場末の盛り場の貸ピストル屋をばく然としらせてくれた。それからというも、村上刑事はボロ服の復員兵姿で毎日歩き回り、そのピストル屋が姿を現すのを待った。その甲斐あって、遂にその行方を突き止めたが、事を焦ったため、すんでのところで村上刑事のピストルを持っている男を取り逃がしてしまった。それから村上刑事は淀橋の事件担当刑事の佐藤と一緒に仕事をすることになった。佐藤刑事は熟練者だけあって仲々手際よく事件にあたった、そして貸ピストル屋から端緒を得た彼等は、本多という男に目星をつけた。聞き込みから野球好きの本多が後楽園球場にちょくちょく現れるという。さっそく手配写真を球場関係者に配布して、五万人という数の中から彼をおびき出し、逮捕に成功する。しかしそれで解決したわけではなかった。村上のピストルは本多の背後にいる遊佐新二郎という男の手もとにあることが分かったからである。そうこうしているうちに、ピストル強盗はついに殺人事件へと発展してしまった。村上と佐藤両刑事は次々と捜査網を縮めて行った。そうして遊佐の情婦のハルミをつきとる。佐藤刑事は単身遊佐の後を追った、村上刑事はハルミの白状を彼女のアパートで待っていたが、不覚にも佐藤刑事は、村上刑事に電話をしている隙に、遊佐の弾に倒れてしまった。佐藤刑事は、村上刑事の輸血のおかげで一命をとりとめたが、純情な村上は慙愧に耐えなかった。そんな折、ハルミの必死の密告によって、彼女との待ち合わせ場所で遊佐を発見した村上刑事は、逃げる遊佐を必死に追いかける。遊佐は村上刑事に向かってピストルを発射する。しかし一発は村上の腕に、あと二発は樹木に流れた。全ての弾を撃ち尽くした遊佐は、ついに村上刑事によって手錠をかけられたのだった。