横溝正史作品のように角川あたりが原作に本腰を入れるような映画作りをしていたならば、結構、商売になる鉱脈があった気がする。

不連続殺人事件
　坂口安吾の傑作推理小説を曽根中生監督が、1977年に映画化した作品。実は、昔一度見ているが、木炭バスと内田裕也の出演程度の記憶がなく、今回再見することにした。退廃的な坂口安吾ワールドを大和屋竺、田中陽造、荒井晴彦ら、当時の一癖も二癖もある連中の脚本でやろうとした企画意図はよくわかるけれど、これだけの大人数の登場人物の作品を当時のATG制作レベルでやろうとしたこと自体、無謀に思う。登場人物、相関関係を頭に入れ整理するだけでも大変で、正直、140分でも尺の足りなさを痛感する。ここはもう少し登場人物を絞りこむ必要があった気がする。でも、そうなると「不連続」という原作の肝がなくなってしまうのかしれない。そうした予算の制約に対し、曽根中生監督は健闘しているとは思う。
　また、ヒロイン夏純子に加えて、当時の日活ロマンポルノの女優たちが顔を揃えていて、日活色の強さもうれしい限り。決して、出来の良くない中でも、終盤のたたみかける謎解きの面白さは格別であり、もし、横溝正史作品のように角川あたりが原作に本腰を入れるような映画作りをしていたならば、結構、商売になる鉱脈があった気がする。