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BAUS 映画から船出した映画館
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これは所謂感動秘話ではない。映画館を通じたある兄弟の街おこしの顛末を描きながらも、拳を突き上げるようなエネルギッシュなアクションなどは特にはない。それどころか、映画全体はむしろ夜のような闇に包まれた虚空に終始してる。兄ハジメが早々に戦火に消えた後、弟サネオとその妻子だけでなく、映画館に働く人達までも、仲間の深まりを見せる。その夕食の団欒の楽しげで和やかな空気感を見ていると、この映画館全体が家族なのだなと誰もが思うことだろう。そう。…この映画館はひとつの大きな船である…。不意に襲う荒波のような悲しみや不安に翻弄されるその家族史。サネオだけでなく、誰かがその闇に縁取られる度に、この船は悲壮な決意で出帆する。不安だらけのその暗い海。…煙よ…明日へ…流れよ…光の方へ。この映画では山のように煙草が吸われ、煙はまるでキャストのひとりのようだ。棚引きながら空に消えても、同じような宿命の私たちをきっと見ているに違いない。煙はどっちに消えた?死者たちの声が…あっちだよ…、と教えてくれる。 その方向へと私たちは声を響かせる。そうだ。音楽だってあるじゃないか?歌は声であり、楽器だって煙草同様に吹かすものじゃないか?…私たちが吐き出したり吹き出したりするもの達…皆最後には空でひとつになる…。そんな風に私たちも「家族」になっていく。甫木元空は『はだかのゆめ』を観た時に、闇を突っ切る電車の線路と山野の風景は一体誰が見てるんだろうか?と思ったりした。恐らくは、畏怖すべき知らない方が無難な常ならざるものに違いないと思ったりもした。『BAUS…』ではその恐怖や畏怖はその虚空の闇に置き換えられながらも、空に住む形なき人間の分身達が私たちの背中を少しだけ押して光へと向かわせてくれる。そう。だからこそ、人びとは映画館の光に集まり、出会い、やがて街になったのだ。街とは煙草の煙の輪っかのように偶々出来たようなものなのだ。だから、無理矢理にわざわざ開拓して作ったりするもんじゃない。この映画は改めて教えてくれる。
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