木靴の樹

きぐつのき|L'albero degli Zoccoli|----

木靴の樹

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レビューの数

40

平均評点

80.0(155人)

観たひと

239

観たいひと

42

(C) 1978 RAI-ITALNOLEGGIO CINEMATOGRAFICO – ISTITUTE LUCE Roma Italy (co-production)

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 イタリア
製作年 1978
公開年月日 1979/4/28
上映時間 187分
製作会社 ライ=イタルノレッジョ=ミラノ映画製作集団
配給 フランス映画社
レイティング
カラー カラー/スタンダード
アスペクト比 スタンダード(1:1.37)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

予告編 ▲ 閉じる▼ もっと見る

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

ある分益小作農場に暮す4家族に起こるできごとを中心に、土に生きる人々の生に対する素朴な感情を描いたカンヌ映画祭78年グランプリ受賞作品。製作はミラノ映画製作集団。監督・脚本・撮影はエルマンノ・オルミ。音楽はJ・S・バッハ作曲のオルガン曲をフェルナンド・ジェルマーニが演奏。美術はエンリコ・トヴァリエリ、衣裳はフランチェスカ・ズッケリが各々担当。出演はルイジ・オルナーギ、フランチェス力・モリッジ、オマール・ブリニョッリ、カルメロ・シルヴァ、マリオ・ブリニョッリ、エミリオ・ペドローニ、テレーザ・ブレッシャニーニ、カルロ・ロータ、ジュゼッペ・ブリニョッリ、マリア・グラツィア・カローリ、ルチア・ペツォーリ、フランコ・ピレンガ、バティスタ・トレヴァイニなど。2016年3月26日より再公開。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

19世紀末の北イタリア、ベルガモ。農村は貧しく、バティスティ(ルイジ・オルナーギ)一家は、他の数家族と一緒に小作人として住み込んでいたが、この農場の土地、住居、畜舎、道具そして樹木の一本までが地主の所有に属していた。フィナール(バティスタ・トレヴァイニ)はけちで知られており、収穫を小石でごまかしていた。ルンク未亡人(テレーザ・ブレッシャニーニ)は夫に死なれた後、洗たく女をして6人の子どもたちを養っていた。ブレナ一家の娘マッダレーナ(ルチア・ペツォーリ)は美しい娘で、勤めている紡績工場のステファノ青年(フランコ・ピレンガ)と交際していた。バティスティ家に男の子が生まれた。学校から帰ったミネク(オマール・ブリニョッリ)は新しい弟のために、河のほとりに並ぶポプラの樹の一本を伐ってきて一足しかない木靴をつくってやった。マッダレーナとステファノの結婚式が済み、ミラノへ新婚旅行に行った2人は、マッダレーナの伯母が修道院長であるサンタ・カテリナ修道院を訪ねた。そこで捨て子の赤児をひきとることにする。ある朝、ポプラが一本伐られていることが地主の目にとまり犯人追求の手がのびた。ミネクの仕業だとわかり、農場を追われることになったバティスティ一家が荷車をまとめていた。この光景を見る者は誰もいなかった。そして、人々は荷車が去ったあとを見守るのだった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2016年4月上旬号

UPCOMING 新作紹介:「木靴の樹」

1990年10月上旬号

特集 木靴の樹:評論

1979年7月上旬夏の特別号

外国映画批評:木靴の樹

1979年5月下旬号

外国映画紹介:木靴の樹

1979年4月下旬号

グラビア:木靴の樹

特集 「木靴の樹」:イタリアに生きた映画を造る監督がいた

特集 「木靴の樹」:私自身の過去との対決と現在のための答えが

2024/08/18

2024/08/18

80点

レンタル/埼玉県 
字幕


幸福の総量

名作の誉れ高し本作をようやく見た。
西洋絵画が動いているような、完璧な構図とカメラワーク。
イタリアの貧しき農民の家族たちが寄り添い生きていく、その過酷でありながも、懸命に生きていく姿に、人間の幸福の総量を考えた。この時代から、人類はずいぶん発展し、産業は革命的に進展し、便利な世の中になった。いわば、基本的衣食住の快適さを獲得し、さらにそれぞれが生きがいまで求めるようになった。しかし、その人間個人の幸福の総量は増えたのか、ひょっとしたら、家族が寄り添い合って生きるあの頃とさほど違わないのではないかと思いながら画面を見つめた。それほどまでに、絵が美しかったから。
しかし、時折挟み込む残酷な人生の仕打ち、そして、極め付きのラストの苦い展開。少年の涙。
いやいや、やはり、こういう人々の懸命な人生があって、人類は苦しみを乗り越え、さらに進化して、結果として幸福の総量を増やしたのだ。

2024/07/18

2024/07/18

90点

購入/ブルーレイ 
字幕


カメラが19世紀末のイタリアにタイムトリップしたかの如くき、小作人たちの生活を映しとる

数十年ぶりに、しかもリマスター版で観た本作はやはり珠玉の名作。それぞれの小作人たちの家族を描き、中でもタイトルとなる木靴の樹のエピソードのバティスティ家。ささやかな暮らしに突然訪れる運命は余りにも切ない。神に祈る彼らに与えるものの哀しさ。エルマンノ・オルミ監督の優しくも冷ややかな見つめる姿が目に浮かぶ。

2024/07/03

2024/07/07

80点

選択しない 


地主と小作人

ネタバレ

 19世紀末、イタリアの地方ベルガモを舞台にして、地主の厳しい締めつけに合いながらも健気に暮らす小作農民たちにフォーカスしたドラマ。ドラマというよりも農民たちの実生活を淡々とスケッチしたものであり、映画のスタイルとしてはずいぶんとぶっきらぼうとも言えるものだ。
 ドキュメントタッチと言ってもよさそうだけどそれとも違うような気もする。何というか貧民たちが主人公の歴史劇を見ているような気分に近い感じ。個々の登場人物たちにそれほど感情移入することなく傍観者的に切り取るカメラのせいもあるかもしれない。これは敢えて意図したものだろう。そうすることで時代における搾取の構造を個人の問題から切り離し重い歴史として描ききろうとしているように感じられた。
 いちおう狭いところで身を寄せ合う4家族が対象になっているらしいけど、一見したところでは誰が誰の家族なのかよくわからない。でもそれを判別しようとせずに、彼らが小作農というひとつのファミリーなのだと思ってみればそれほどややこしいこともなかろう。
 映画はそれこそ彼らの日常(食事風景や農作業のようすから冠婚葬祭といったもろもろ)がスケッチされていくだけ。悲惨なエピソードだけではなく農民たちのこずるさもしっかりと刻む。したたかでないと生きていけないのも確か。
 夜はろうそくの光だけで薄暗く、人の顔もあまり判別できない。家畜と人間の濃い関係も詳細に描かれる。そういった細部の積み重ねが農業全般と小作農の息苦しさを分厚く見せていくことに繋がる。
 タイトルにもなっている「木靴」のエピソードが物悲しい結末を導くことになってしまう。映画は農民たちの暮らしぶりに集中していて政治的な主張は映画全体を通してほとんど触れられないけれど、わずかにインサートされる場面がある。でも長尺のなかではそのわずかなシーンが効果的に観客には刻まれるだろう。封建時代の崩壊が目前に迫った時代の空気をいち寒村を舞台にして切り取っていた。

2024/03/16

2024/03/16

83点

テレビ/有料放送/シネフィルWOWOW 
字幕


地主に収奪される150年前の彼らは私の隣人だ

『木靴の樹』
L'Albero degli zoccoli
1978

「19世紀イタリア・ロンバルディア州に4軒の農家があった。彼らは小作農で収入の3分の2を地主が取っていた」

カルロ神父「ミネクを学校に行かせなさい。
パティスティ「でも学校まで 6 キロ、帰り 6 キロは長いように思えます」
神父「ミネクは若いし、足も強い」
バディスティ「ちょうど次の赤ちゃんが生まれるところです。ミネクには家のことを手伝ってもらわなくては」
神父「彼は大きくなったら、もっとお前を助けてくれる。今のところは神の摂理に任せなさい」
パティスティ「私は学校なんざ行きませんでした」
神父「それは正当な理由にはならない。それはお前さんも知っているだろう。もし神がミネクに良い心を与えたなら、それは神がミネクにもっと期待していることの表れです。少年の父親として、神の命令に従うのがお前さんの義務だ」

この映画は
(1)勉強ができる息子ミネクと両親のバディスティ一家
(2)祖父アンセルモと夫を亡くした夫人と6人の子供のルンク一家
(3)美しい一人娘マッダレーナのいるブルナ一家
(4)ケチなヴィナール一家
の4家族が暮らす長屋のような集合住宅の中を描く。

彼かが住む集合住宅は広いベランダを持つ二階建て。中庭を挟んで向かいには家畜小屋。住宅と家畜小屋を囲むように塀で囲まれている。

ここには『父・パードレ・パドローネ』の様に子供を虐待する親は居ない。1800年代末なので子供が働くのが当たり前の時代というだけだ。

4家族は昼の労働が終わると集会所に集まって過ごす。誰かが面白い話や怖い話をする。テレビもラジオもない時代の食後の団欒だ。男達は誰も酒を飲まない。いや酒を買う余裕が無いのだ。

神父「礼拝に来なかったね?」
ルンク夫人「家の仕事に追われていまして」
神父「どうだろう下の姉妹二人を教会の施設で引き取るというのは?」

それを聞いた長男は「昼も夜も働くから妹達を連れて行かないで」という。しかし一家が地主から与えられている牛が病気になり一家の経済は破綻しそうになる。

ここで泣きそうになった。夫の死、子供を抱えた暮らし、牛の病。現代だって起きかねない苦境だ。

マッダレーナを好きな青年がゆっくりと距離を近づけていく様子も微笑ましい。

結婚した二人は州都ミラノまで船で下る。この川下りの旅がのんびりしていて美しい。しかし遠くで煙が上るのが見える。ミラノにつくと軍隊がデモを行った青年達を連行している。

マッダレーナと夫は彼女の伯母がいる修道院を訪ねて赤ちゃんを里子として貰い受けて帰ってくる。ここはふんわりとした「処女懐胎」の隠喩の様に思われる。

毎日12キロ歩くミネクの木靴はついに割れてしまう。片足裸足で帰ってきたミネクを労る父バディステイは夜中に密かに地主の木を切り木靴を作る。

これがバレてバディスティ一家は農場を追い出されてしまう。

この映画に出演しているのはべルガモ県の農民達。全員素人。みんな味わい深い良い顔をしている。

素人を使ったイタリア映画というとネオリアリズモ時代のビットリオ・デシーカ、ロベルト・ロッセリーニの戦後のイタリアを描いた映画を思い出す。ネオリアリズモでは無いけどパゾリーニはイエスの生涯を描くときも全員素人俳優だった。

最近観た『ニュールンベルグ裁判』は練り上げられた演劇的セリフ、俳優の熱演による見事な映画だった。

『木靴の樹』は対照的に素朴なセリフ、素人俳優の自然な演技の映画だ。しかし家を追い出され当てのない旅に出ることを感じた子供の涙を見て切なくてたまらない。

こういうほぼドキュメンタリーに近い映画もあっても良い。3時間を共にした彼等はもはや私の隣人だ。

2023/11/13

2023/11/14

80点

選択しない 


名画の連続

公開当時話題になりましたが、息子の靴を作る木を切ったため家族が土地を追われるという結末を知り、あまりに理不尽で観る気になれませんでした。ふと観てみたくなり初めての鑑賞でしたが、絵画が連続するかのような美しい画面、その色彩と構図に驚きました。4家族それぞれの日常がゆったりと語られていく様は感動的。問題の場面はかなり抑えてトーンで静かに終わりを迎えます。きっとその家族は別の土地で幸せな生活を送ったと、そう思うことにしました。

2023/08/31

85点

選択しない 


味わい深い

貧しい小作人の家族達の生活、地主からの圧政等をリアルスティックに描いた作品で、幾つかのエピソードを織りなす。中ではマッダレーナとステファノの結婚式エピソードが微笑ましい。又、木靴を息子の為に作るエピソードは温かいが、その結末は厳しい。自然の風景描写は美しくその画面だけ眺めても味わい深い。