川で溺れて助けられたカビリアは、子供から『娼婦だ』と呼ばれる。客をとっている=男に買われる描写は一切ない。アルモドバル《オールアバウト・マイ・マザー》のように街中からちょっと外れた野原みたいなとこで、娼婦たちがたむろしている。中盤に描写される繁華街で客をとっている娼婦は衣装も金がかかってるし、あきらかに美しい。カビリアは底辺の娼婦稼業のようだ。毛皮?の半纏みたいなのも貧乏くさいしダサい。江戸時代の夜鷹と蹴ころの中間みたいな感じかな?その辺の知識、経験は不足している、街娼も見たこともないのでよく分からない。
このテの売買春の一番馴染み深いのは、我らがシャーリー・マクレーン嬢が演じた《あなただけ今晩は》のイルマである。街で客をとりいつものホテル(連れ込み宿?)に入る。常に事後の描写でイルマの身の上話に客がチップをはずむ。
彼女はまさにこの映画のリメイク《スイート・チャリティ》で主人公を演じた。中学生時代、日比谷有楽座の70mmスクリーンに映し出されたシャーリー・マクレーンの肌はソバカスだらけで汚かった。ジュリエッタ・マシーナはしょぼくれた風情だが肌はきれいだし可愛い顔立ちだ。なんといっても直線の眉毛が素晴らしい。オードリー・ヘップバーンのサブリナと、このジュリエッタ・マシーナのカビリアの眉毛メイクは映画史上の画期的メイクではないか?
《スイート・チャリティ》では閉所恐怖症の会計士はチャリティの過去に恐れをなして結局逃げてしまった。
カビリアの会計士はカビリアの全財産75万リラを掻っ攫って逃げてしまう。
チャリティに希望を与えるのはヒッピー=フラワー・チルドレンだが、ここではニーノ・ロータの”Lla Ri Lli Ra”を歌う若者たちである。
ラストのカビリアのアップが絶品で涙なしに見れない。
フェリーニって宗教=カトリックには距離をとって、むしろ冷ややかに描く(《甘い生活》にも似た描写がある)が、結局人生を肯定的に捉えている。貴族的なヴィスコンティの厭世主義からは遠い。一般大衆、イタリア人のエネルギーを信頼しているようだ。
見逃していたフェリーニ作品、やっと見れたことに感謝!