イタリア・ナポリ。
トム・リプリー青年(アラン・ドロン)は、フィリップ・グリンリーフ青年(モーリス・ロネ)をフィリップの父の命令で連れ戻しに来た。
トムは才人。
目端が利いて役立つので、フィリップは重宝して友人のように扱うが、心底では階級が違うと思っている。
貧乏なトムは、連れ戻した際にもらえる約束の5000ドルがほしい。
いや、美しい婚約者のマルジェ(マリー・ラフォレ)も含めて、フィリップが持つすべてのものがほしいのだ・・・
フィリップ、マルジュ、トムの3人でヨットに乗って海上生活を楽しんだが、フィリップとの諍いからマルジュは下船。
フィリップとふたりになったトムは彼を殺し、フィリップになりすますことにする・・・
といった物語。
現代の視点では、そうそう簡単になりすますことなどできないような気もするが、スマホなどで取引すべてが完結するので、もしかしたら現代の方が上手くいくかもしれない。
それはそうとして、恐ろしいばかりのサスペンスで、波高い海上で死体を始末しようとするトムの鬼気迫る姿。
特徴的なフィリップのサインをマネするトムの冷血な様子。
アラン・ドロンの美貌が凄まじい分、鬼人のように見えてきます。
後半は、トムのなりすましがいつバレるのかのサスペンス。
サスペンスの基本、観客は知っているが、劇中のトムを除く人物の誰もが知らないというシチュエーションを積み重ねることで、サスペンスを盛り上げていきます。
ルネ・クレマンの演出、みごとですね。
さてさて、才人トム・リプリーの完全犯罪、ほぼほぼ成功に見えたが、悪事が露見するシーン・・・
おぉ、こういうワンカットだったのか!
フィリップとマルジュの愛憎関係、結局のところは切っても切れない関係だった、という。
(ヨットの船名がマルジュなので、暗喩だったわけで)
有名なテーマ曲は、前半と最終盤に流れるだけで、それほど登場場面は多くありませんが、鮮やかな幕切れなので耳に残る、という。
なお、トムが銀行でフィリップの預金を引き出す際、彼の青い眼のアップが2回インサートされるが、たぶん1回目はフィリップ=モーリス・ロネのそれでしょうね。
トムとフィリップが、いわばコインの裏表をあらわした演出だと思うのですが・・・
真偽は如何に。