戦時下の青年と少女の束の間の淡い恋物語が甘く切ない
原題"Баллада о солдате"で、兵士のバラードの意。
第二次世界大戦中の19歳の若い通信兵が主人公で、前線でドイツ軍の戦車を破壊したことから、特別休暇を願い出て母の待つ家に帰る旅路の物語。
母からの手紙で家の屋根を修理するため、往路2日、滞在2日、帰路2日の休暇をもらうが、真面目で人の好いアリョーシャは道中で出会った片足を失った兵士に付き添ったり、前線に赴く兵士に頼まれて妻に石鹸を届けたり、貨車に乗り込んできた少女シューラに恋して道中を共にしたり、列車が爆撃に遭って破壊されたりで、時間を空費し、結局わずかな時間母に会っただけで帰隊しなければならなくなる。
冒頭、アリョーシャが戦死したことが示唆され、母との最後の別れのエピソードが回想の形で描かれる。母が村はずれの細くて長い道を眺め、戦争が終わっても息子が帰ってこないことが語られ、それがアリョーシャが道を去って行くラストシーンへと繋がる。その光景が人影一つ、動物の姿一つないロシアの静寂な大地と結びついて、詩情溢れる映像となっている。
優しくて純粋で素朴な青年が、銃後に残された兵士の家族たちの喜びや悲しみに出会い、少女に恋するという出来事の中に、戦功とは対照的な平凡な日常の大切さを休暇という短い時間の中に凝縮して描く良心的な反戦映画。
冒頭、アリョーシャの戦友たちは母の知らない彼のエピソードを知っているというナレーションが入るが、語られるのは戦友たちも知らないアリョーシャだけが知っている物語で、あるいは翻訳に問題があったのか?
物語の中心となるアリョーシャとシューラの束の間の淡い恋物語が甘く切ない。(キネ旬10位)