シェルタリング・スカイ

しぇるたりんぐすかい|The Sheltering Sky|The Sheltering Sky

シェルタリング・スカイ

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レビューの数

40

平均評点

70.8(198人)

観たひと

340

観たいひと

23

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 イギリス
製作年 1990
公開年月日 1991/3/29
上映時間 0分
製作会社 ジェレミー・トーマス・プロ
配給 テレビ朝日=松竹富士
レイティング
カラー カラー/ビスタ
アスペクト比 アメリカンビスタ(1:1.85)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

失われた夢を取り戻すためにやってきたはずのアフリカで、愛を見失って彷徨うアメリカ人夫婦がしだいに切り離されてそれぞれの孤独な内面を露わにしてゆく姿を描く、ベルナルド・ベルトルッチの「ラストエンペラー」に続く監督作品。エグゼキュティヴ・プロデューサーはウィリアム・アルドリッチ、製作はジェレミー・トーマス、脚本はポール・ボウルズの原作を基にベルトルッチとマーク・ペプローの共同、撮影は「ディック・トレイシー」のヴィットリオ・ストラーロ、音楽は坂本龍一が担当。出演はデブラ・ウィンガー、ジョン・マルコヴィッチほか。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

終戦後まもなくの1947年、北アフリカ。ニューヨークからやって来た作曲家のポート・モレスビー(ジョン・マルコヴィッチ)とその妻で劇作家のキット(デブラ・ウィンガー)の目的は単なる観光ではなく、求めるべき夢さえ失なった彼らの深い喪失感をこの文明と隔絶し、あてどもない拡がりを持った世界で癒すためだった。その旅の道連れとなったのがポートの友人で上流社会に属するタナー(キャンベル・スコット)。結婚して10年、夫との心のすれ違いを感じるキットに、かねてより彼女に心を寄せるタナーは接近してゆく。やがて3人は次の目的地に向かうが、ホテルで同宿したイギリスのトラベル・ライター、ライル夫人とその息子で母親から金をせびってばかりいるエリックと同じ車に乗ったポートに対して、キットとタナーは別行動をとった。そしてそこでついにキットとタナーは一夜を共にする。が、アフリカ奥地の風土に嫌気がさしたタナーは別の土地へ向かい、二人きりになったポートとキットは彼らの心の虚無を象徴するかのようなアフリカの蒼穹の下でひととき愛を確認したかにみえたがそれもつかの間、ポートの体はチフスにむしばまれていたのだった。医者もいない砂漠の果ての町でポートは息絶える。ついに一人きりになったキットの旅は、しかしまだ続く。何もない砂漠の荒寥を自らの内面と一体化したかのようにアラブ人の隊商の中に身を埋め、男と体を重ねる彼女の眼はもはや何ものも映し出さないかのようであった。そんな彼女の行方を探すタナーの手でやっとキットは砂漠からタンジールへと連れ戻される。が、もはや彼女はもとの自分へと返ることなどできない。タナーが一瞬目を離すともはや彼女の姿はどこにもなかった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

キネマ旬報増刊 キネマ旬報NEXT Vol.23 登坂広臣と恋愛映画「雪の華」

Special Issue④ 忘れられないものSpecial:ベルトルッチに愛をこめて「ラスト・エンペラー」「シェルタリング・スカイ」「シャンドライの恋」

1991年4月下旬号

外国映画批評:シェルタリング・スカイ

外国映画紹介:シェルタリング・スカイ

1991年3月下旬号

グラビア《Coming Attractions》(新作紹介):シェルタリング・スカイ

特集 シェルタリング・スカイ:

特集 シェルタリング・スカイ:ベルトルッチ インタビュー

特集 シェルタリング・スカイ:ジェレミー・トーマス インタビュー

1991年2月上旬号

グラビア《Special Selections》:シェルタリング・スカイ

2023/11/18

2023/11/20

75点

VOD/U-NEXT 
字幕


タンジェの景観美と、トラベラーが辿り着いた果ての姿

Shelterig Skyは原作がPaul Bowlesの小説ですが、モロッコにおけるタンジェでの実体験が基になっているとの事。実は似た実体験に基づく小説がもう一つあって、Carol ArdmanのTangier Love Storyがそれです。私は英語の教材で偶然Tangier Love Storyを読んだことがあって、英語素材でしたがその時のタンジェの描写やイメージ、小説の退廃的なモラトリアムな雰囲気が妙に魅力的で惹き込まれた記憶がありました。その小説にCarolの恋人の相手としてPaulが出ていて、そこから関心を持って調べていたらSheltering Skyが実はPaulの原作だったと知り今回の視聴に繋がりました。その小説の世界が映像化されていたので個人的とても馴染みやすく、モロッコの異国情緒あふれる景観に感動しました。ストーリーに派手さはありませんが、愛情だけではなく時に距離ができるその感情の揺り動きは現実的であり、深みがあって色々と考えさせてくれる作品でした。中盤くらいから思わぬ展開を見せてその世界観に圧倒されましたが、果たしてトラベラーはこのような結末を受け入れるために旅を進んできたのか、何のための旅だったのか、と思わずにはいられません。それにしても主演女優のDebra Wingerは本当に美しかった。

2023/07/25

2023/07/26

68点

テレビ/有料放送/スターチャンネル 


愛しているのはどっちだ

劇作家のキット(デブラ・ウィンガー)と夫で作曲家のポート・モレスビー(ジョン・マルコヴィッチ)がアフリカにやってくる。もう一人お邪魔虫の友人タナー(キャンベル・スコット)も同行している。夫婦の目的はぎくしゃくしてきた関係の修復にあり、タナーはキットに惚れている。夫の目を盗んでタナーとキットは一夜を共にするが、キットはまだ夫への思いが残っている。
ポートは移動途中で疫病にかかり、外人部隊の営舎で治療を受けるが、キットを愛していると言い、亡くなってしまう。そしてキットは夫の愛を確かめたのに、夫の遺体を置いててどこかへ旅立ってしまう。タナーはキットを探すが行方は分からない。
キットは隊商にに拾われ、長の囲いものになるが、妻達に見つかり追い出される。
そして大使館員に見つけられ、タナーと再会かと思われたが、またもやどこかへ消えてしまう。
この長い愛の物語を簡単に説明することは難しい。早い話が、キットとポートの愛は本物だったと言うこと描きたいのだろうと思う。

2023/06/03

2023/06/17

75点

選択しない 
字幕


『行きて帰らぬ物語』

『シェルタリング・スカイ』(The Sheltering Sky)

原作者も酷評した作品だけど捨てがたい魅力がある。

「戦後初の観光客(ツーリスト)だな」
「観光客じゃない。私たちは旅行家(トラベラー)よ」
「どこが違う?」
「着いてすぐ帰ることを考えるのがツーリスト」
「トラベラーは帰国しないこともある」
「つまり僕はツーリストか?」
「そう。私は半々」

タイトルバックは白黒の記録映像。ニューヨークの色々な映像。

本編のファーストカットが印象的。画面の下半分がコンクリートの岸壁。そこに主人公たち三人の頭が現れる。三人は岸壁の階段を登り港に上陸する。カメラがあおむくと巨大なクレーンがありクレーンのブームをなめてカメラは下を見下ろすと広々とした港の真ん中に主人公たちの荷物が積み上げられている。

ここまでがワンカット。ヴィットリオ・ストラーロの華麗なカメラワークだ。そして冒頭の台詞にやりとりになる。

映画の登場人物は音楽家ポート、その妻で劇作家のキット(キャサリン)、二人の友人のタナーの三人。

結局タナーはツーリストでポートとキットはトラベラーであることが描かれて映画は終わる。

ロックバンド・ポリスに「Tea in the Sahara」(1983)という曲がある。歌詞の中に

Beneath the sheltering sky
We have this strange obsession

庇護された空の下、私たちは奇妙な強迫観念を持っていた。

作詞作曲はゴードン・サムナーことスティング。もと高校教師のゴードンはきっと小説「シェルタリング・スカイ」を読んでこの曲のインスピレーションを得たのだろう。

原作者ポール・ボウルスが「シェルタリング・スカイ」を出版したのは1949年。ボウルスはストラビンスキーに、衝撃を受けて音楽家になり後に小説家になった。妻ジェーンとタンジールを旅行した体験が『シェルタリング・スカイ』の元になっているそうだ。

IMDBによるとナレーションと出演(ラストの台詞も担当)しているボウルスは後年のインタビューで映画について「決して映画化されるべきではなかった。結末はバカバカしいし、残りはかなり酷い」と酷評している。

原作者は酷評しているけれどかったるい前半を過ぎて異世界冒険の後半を見た後は非常に引き込まれた作品だった。傑作ではないのは明らかだけどストラーロが捉えた砂漠の世界は地球ではないような魅力に満ちている。

最初に想定されたキャストはポートがウィリアム・ハート、キットはメラニー・グリフィス、タナーがデニス・クエイドだったが彼等のギャランティが高額なので実現しなかった。

その結果ジョン・マルコヴィッチ、デブラ・ウインガー、キャンベル・スコットという配役になった。

ポートがウィリアム・ハートだったらだいぶ印象が違っただろうと思った。マルコヴィッチは何を考えているかわからない不気味さがあり感情移入しにくい。ウィリアム・ハートは「悩める西欧文明」を代表しただろう。

『シェルタリング・スカイ』が「悩める西欧文明」が「理解できない非西欧文明」に出会って崩壊する話だからだ。ジョーゼフ・コンラッド『闇の奥』、『アラビアのロレンス』、遠藤周作の『沈黙』と通じるものがある。

前半の三人旅のあれこれが「悩める西欧文明」の描写なのだがあまり興味をひかない。

後半の砂漠の旅と隊商の本拠地の街がとても魅力的だ。そして幽閉されたキットは静かに狂って行く。

ほとんどセリフがなく(北アフリカ人のセリフには字幕がつかない)何を言っているのかわからない非西欧人に囚われる。この異世界が恐ろしくもあり魅力的でもある。

原作者ボウルズの「結末が馬鹿げている」という言葉が気になって国会図書館に行って原作の結末を読んでみた。

映画は原作の後に続けて一つのセリフのやり取りを付け加えている。キットとカフェにいつも居座っている老人(原作者ボウルズが演じている)のやり取りで老人のセリフで映画は終わる。

そしてそのセリフは確かに原作の主題を台無しにしている。

原作文庫本に評論家・四方田犬彦さんが書いている「ここには古来より教養小説が範として描いてきた、通過儀礼としての輝かしき旅の、まさに逆立した地獄図絵が実現されているのである。(中略)

あまりにも遠くへ歩み出してしまったために、自分がいつ出発したのかも忘れてしまい、永遠の彷徨のなかでもはや帰還が困難となってしまった者たち」

ポートとキットはツーリストでもなければトラベラーでもなく日本の法律で言う「行旅死亡人」に近い存在だ。トールキンは「行きて帰りし物語」を書いたがボウルズは「行きて帰らぬ物語」を書いたのだ。

だからボウルズ演ずる老人のセリフは原作の書き換えになってしまっている。撮影の時には出来上がりがどうなるのかわからないからボウルズを責めることはできない。

確かにできた映画をみたらボウルズは「ベルトルッチは何にもわかっていなかったんだな」と思ったことだろう。

2023/05/14

2023/05/16

10点

映画館/千葉県/キネマ旬報シアター(旧TKPシアター柏) 
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坂本龍一追悼特集で

R18作品は映画館でみる、それだけ。
この作品を、私は理解できませんでした。

2023/05/03

2023/05/05

70点

映画館/宮城県/フォーラム仙台 
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トラベラーになったキット

 1990年のイギリス映画。坂本龍一追悼上映で鑑賞。ポール・ボウルズの小説の映画化作品。北アフリカに降立った作曲家のポートと劇作家のキットの夫婦、そしてホスト役のタナー。三人はタンジールのグランドホテルへ。ポートとキットは結婚10年目だが寝室を別にしている。ポートが夢の話をしようとするとキットが嫌がり口喧嘩になる。同じホテルに滞在するトラベルライターのライル夫人とその息子で酒浸りのエリックにポートは気に入られる。キットはポートにタナーのことが信用できないと言いそのことでポートは部屋を出ていき現地の男に誘われるまま娼婦のところへ案内される。翌朝迎えに来たタナーとキットがいる所へポートが帰ってきて、タナーとキットを怪しむのだった。次の目的地までライル夫人の車に誘われたが3人は乗れないということとエリックと一緒の車は嫌だということでポートだけが同乗し、キットとタナーは汽車で移動する。そんな中で二人はいい関係になってしまう。次の集落はハエの多い地域で辟易していたが三人で過ごしていた。ポートはエリックにタナーを連れていくよう頼み、ポートとキットはバスで小さな村へ到着するがポートは体調を崩し、また村では疫病が流行っていてホテルに入れてもらえなかった。別の町の外人部隊の砦を頼っていくが、医者はいなかったが腸チフスだろうと言われ薬をもらう。しかしポートは次第に衰弱していき亡くなってしまう。キットはポートの亡骸を置いてトランク一つ持って砂漠を歩き、ラクダを連れた一団に助けてもらう。そして若者に気に入られ集落へ連れていかれ、若者がまた外へ出たとき女たちと顔を合わせるが、町でのちょっとしたことでアメリカ大使館に保護されタンジールへ連れ戻される。ポート夫妻を探していたタナーは外人部隊に行き着きポートを埋葬しキットに合流するがちょっとした隙にキットは姿を消してしまう。かつておとずれたカフェに入ったキットは年取った小説家に迷ったのかねと尋ねられ頷くのだった。
 原作がどういう作品なのかはわからないけど、ベルトルッチの映画でした。前半のキットとポートの思いのすれ違いは、しばしばお目見えするようなお話でしたが、後半キットが砂漠を彷徨い現地の男に囲われ村へ行き軟禁状態を経て町を歩き、ついには保護されるもカフェに行き着くまでは、知らない言葉がとびかう感じのほぼ台詞のないシーンばかりでしたが迷い、諦め、それでも何かの付属物になることを頑なに拒否するキットの心情がじわじわ滲み出ていました。これを観るための前半部分が異様に長かったけどそこでのポートとの関係性があってこそだったのかな。ライル夫人の旅行記を一度読んでみたいものです。どんなふうにあの北アフリカが描かれているんだろう。

2023/04/16

2023/04/16

80点

その他/109シネマズ新宿 
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ベルトリッチの異文化探訪ビッグバジェット三部作?の二本目。アントニオーニがこじんまりやってたような、愛の不毛を、壮大に壮大なスケールで描く。砂漠にひとり取り残されたデブラ・ウインガーと同じく、ベルトリッチとストラーロも砂漠の真ん中で呆然と立ちすくんでいるようだ。
アブドゥルワッハーブやウム・クルスーム、ジュジューカなど北アフリカの音楽がふんだんに使用されているが、此処ぞというところでは、教授のロマンティックな音楽とともに古典的すぎる演出となるのは何故か。むしろそこだけ浮いてるような気もする。