刑務所に戻るのが嫌で精神病を詐称するジャック・ニコルソンは倫理的にどうかと思った。
それはさておき、今の時代に観るとそれほど非道な管理下に置かれた精神病院とは思えない。婦長もある意味、信念を持った優秀な医療従事者ではないだろうか。ワールドシリーズ観戦に関しても一応は多数決を採った訳だし。
最初は単なるKYに思えたジャック・ニコルソンのパワフルな行動が患者たちの意識を変えていく。バスを乗り逃げし海釣りに出掛けるシーンはとりわけ心に残った。自由って素晴らしい。また、チーフの聾唖もまた演技だったことに驚く。
そんなことを考えている内に映画は衝撃の結末へと向かう。ロボトミー手術を施されたジャック・ニコルソン。(これが真っ当な医療行為として行われていたことに戦慄を覚える)ここで初めて本作の真のテーマが姿を表す。チーフはジャックの尊厳を守るため窒息死させる。そう、人間の尊厳とは自由と意志を持って生きることなのだ。
ネイティブ・アメリカンの置かれた闇も浮かび上がらせる。アメリカン・ニューシネマというジャンルを念頭に置かないと評価を誤る作品かもしれない。
…チーフは閉塞したアメリカを捨て走り去っていく。