久し振りに再見。これまでも何度も見た不朽の名作。でも、何度見てもいいなと思う。
この作品は大林宣彦監督の第6作。僕はデビュー作「HOUSE」を見て、頭をガンと殴られた口で、以後大林宣彦監督の作品は欠かさず見るようにしていたが、当初驚いた大林映画の先進性というのは、この頃いささか陰りを呈していたと思う。そこに、この映画「転校生」が現れる。
もちろん、男の子と女の子が入れ替わってしまうという物語はいささか風変りだが、その描き方は至ってオーソドックス。大林監督はこのようなスタンダードな映画も撮れるんだとその当時は感心したものだった(それくらい、大林監督の映画といえば、特殊だったのだ)。
冒頭、モノクロで描かれる尾道の風景がとても美しく、その後展開される取り違えの物語からカラーに移行し、そして、元通りの体になって再びモノクロに変わる。
性が変わることで、今まで微塵も思っていなかった異性の違いに、ある意味呆然とし、しかしその一方で果敢にその違いを飲み込もうとする思春期の少年少女が、しっかりと描かれる。それにしても、当時は無名だった小林聡美と尾美としのりの豊かな表現力には驚かされる。特に、小林聡美は、少女から少年への移行を見事に演じて素晴らしい。尾美としのりは受けの芝居なので、小林ほどは目立たないが、こちらもしっかり立っている。加えて、樹木希林のお母さんの見事さも特筆に値する。
そして、ラストの別れのシーン。ここで小林聡美はほんのり化粧をして、一皮むけた女振りとなる。この別れのシーンではいつも涙が出てしまう。トラックを追いかけていた小林聡美が、ついに立ち止まり、そして帰っていく。その時に、しょんぼりするのではなく、スキップを踏むように歩いていく。ここから新しい彼女の人生が始まることを示唆するように。すごくいいラストシーンだと思う。