かつて、押井守が「日本を代表するスーパークリエイターの一人」と持ち上げられ、ネット上でも「オタクの必修科目」のように扱われていた時期があった(記憶が正しければ『イノセンス』『スカイ・クロラ』の頃)。
その頃、高校生になりたてのガキであった僕はオタクとしてのランクを上げたくて、レンタルビデオ店で手当たり次第に押井作品をレンタルして見ていったのだが、当時の僕はあまりに未熟で、押井作品の殆どを理解することが出来なかった。
『イノセンス』『スカイ・クロラ』は、起伏がなくて途中で寝た。
『GHOST IN THE SHELL』『機動警察パトレイバー2』『ビューティフル・ドリーマー』は、画作りには感動したが、話やテーマを理解できなかった。
『アヴァロン』。投げっぱなしジャーマンなオチにキレた。
特に『ASSAULT GIRLS』は、ビジュアル的にもシナリオ的にもあまりにもつまらなくて、「押井守って実はたいしたことないんじゃないの?」と当時の僕は疑惑を持ってしまったし、成長した今でも『ASSAULT GIRLS』だけは認めることができない。
そんな当時の僕が、唯一手放しで「すごい!最高の映画だ!」と感動したのが『パトレイバー the Movie』である。
そんな思い出の映画がスクリーンで見られるという一報を聞き、僕は急いで手近なリバイバル上映を行っている映画館に駆け込んだ。
スクリーンで見たパトレイバーは「あの頃と変わらない」どころか、かつて感じた以上の面白さがあった。
今や「コンピュータウイルス」という題材は目新しいものではなくなってしまったものの、本作は時代の流れで色褪せるようなチャチな作品ではなく、川井憲次の最高の劇伴と共に始まるプロローグ→ドカンと出るタイトルで既に心はブチ上がり、HOSの謎を追う遊馬とその裏でHOSを作り上げ自殺した帆場暎一を追う松井刑事、その間にテンポ良く挟まれるギャグ、そして何よりシゲさんと遊馬がレイバー暴走のメカニズムを解き、特車二課が方舟破壊に向かうクライマックスはいつ見ても最高オブ最高オブ最高。
年齢を経たことで、ガキの頃はいまいちわからなかった押井監督特有の「虚と実の境目を問う(この場合は帆場暎一の存在)」構造や松井刑事たちが地道に足で帆場の正体を探るダレ場の面白さも多少わかるようになったし、本当にスクリーンで再鑑賞してよかった。
『パトレイバー the Movie』を見る度にオジサン思うんだけど…やっぱ押井さんって、誰かが手綱を握って程よく制御したほうが面白いんじゃないかな。
それとも、今見直せば当時は見えなかったモンが見えてくるのかな。