久しぶりに再見。
確か、この映画は栗原小巻主演の「モスクワわが愛」の併映だったんだ。併映作との落差というのはすごく大きなものがあった。当然、当時の若者はこちらの映画に熱狂したわけなんだが、神代辰巳のロマンポルノに熱を上げていた者にとっては、いささか生ぬるい映画という風に思われていた。僕もそうだった。でも、久しぶりに見ると、この映画もなかなかいい。何よりもショーケンが素晴らしい。
ファーストショットで、ショーケンがローラスケートを転がして、ビルの屋上のビヤガーデンのようなところで、椅子やテーブルを運んでいる。そこに、井上堯之の音楽がかぶさる、この出だしはいつ見てもゾクゾクする。
物語は、すごくシンプルで、上昇志向の強い大学生が、社長令嬢と結婚する為に、妊娠している付き合っていた彼女を殺すというもの。でも、神代辰巳はそういった筋立てには興味がないようで、むしろ自分の存在理由を見いだせない若者が、陥っていく泥沼のような現実に対して、どのように対抗していくかを、搦め手で描いている。それは、常に後ろを振り返る癖だったり、友人(河原崎健三)と肩や頭をぶつけ合う挨拶だったり、恋人(桃井かおり)とお互いを背負いあう雪山だったり、常に口ずさむエンヤトットだったりという、物語とは直接関係ない仕草である。そして、当時熱狂した観客は、筋立てよりも唐突に挿入されるそうした仕草を強烈に覚えている。
そういう意味では、初の日活以外の場での製作だったにもかかわらず、確かにこの映画は神代辰巳の映画になっていた。
何と言ってもショーケンが格好良く、あのトレンチコートとマフラーにはしびれた。そして桃井かおりが素敵だ。そして、歩行者天国で歩行者にまとわりつく芹明香のインパクトがすごい。