仁義の墓場

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仁義の墓場

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レビューの数

40

平均評点

76.5(211人)

観たひと

297

観たいひと

15

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1975
公開年月日 1975/2/15
上映時間 94分
製作会社 東映東京
配給 東映
レイティング
カラー カラー/ビスタ
アスペクト比 アメリカンビスタ(1:1.85)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督深作欣二 
脚本鴨井達比古 
原作藤田五郎 
企画吉田達 
撮影仲沢半次郎 
美術桑名忠之 
音楽津島利章 
録音小松忠之 
照明大野忠三郎 
編集田中修 
助監督小平透 
スチール加藤光男 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演渡哲也 石川力夫
梅宮辰夫 今井幸三郎
郷えい治 杉浦誠
山城新伍 田村弘
高月忠 
ハナ肇 河田修造
室田日出男 松岡安夫
曽根晴美 遠山敏
前川哲男 神野
土山登士幸 武田
畑中猛重 
城春樹 五郎
田中邦衛 小崎勝次
今井健二 青木政次
汐路章 徐辰
玉川伊佐男 岡部
多岐川裕美 石川地恵子
池玲子 今井照子
衣麻遼子 夏子
小林千枝 河田の妾
芹明香 ドヤの女
三谷昇 石工
河合絃司 刑事
関山耕司 刑事
相馬剛三 警官
浜田寅彦 警察署長
近藤宏 警察次長
伊達三郎 親分
成田三樹夫 梶木昇
安藤昇 野津竜之助

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

戦後の混乱期、暴力と抗争に明け暮れる新宿周辺を舞台に、強烈に生き、散った一人のやくざの生き様、死に様を描く。原作は藤田五郎の「関東やくざ者」と「仁義の墓場」より。脚本は「女番長 タイマン勝負」の鴨井達比古、監督は「新仁義なき戦い」の深作欣二、撮影は「安藤組外伝 人斬り舎弟」の仲沢半次郎がそれぞれ担当。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

昭和二十一年。新宿には、テキ屋系の四つの組織が縄張りを分けあっていた。石川力夫の所属する河田組は、経営の才にたけた河田修造を組長に、組員三百名を数え、野津組に次ぐ勢力を誇っていた。兄弟分の今井幸三郎、杉浦、田村らを伴った石川は、中野の愚連隊“山東会”の賭場を襲い金を奪った。山東会の追手から逃がれ、忍び込んだ家で、石川は留守番をしていた娘、地恵子を衝動的に犯した。この事件をきっかけに、山東会と石川たちの抗争が起こり、石川らが山東会を壊滅させ、同時期に今井組が誕生した。粗野で兇暴な石川に手を焼く河田は、最近、縄張りを荒らす、池袋親和会の血桜の政こと、青木政次を消すように示唆した。石川は、政の情婦夏子を強姦し、駈けつけた政の顔をビール瓶でめった突きにした。政の報復のために、続々と親和会の兵隊が新宿に進出して来た。だがこの抗争は、野津組々長の仲介で大事には致らなかった。それから間もなく、杉浦が野津組の幹部・岡部の妹と結婚した事で野津の盃を受けた。一方、相変らず無鉄砲な石川は、野津に借金を断わられたために、その腹いせに野津の自家用車に火をつけた。岡部は杉浦に石川殺しを命じるが、杉浦は失敗。その夜以来、杉浦とその女房は東京から消えた。この一件で河田は石川に猛烈な制裁を加えたが、逆上した石川は河田を刺してしまった。一時は今井の許に身を隠した石川だが、今では石川の女房になっている地恵子が彼の身を案じ警察に報せたために、石川は逮捕され、一年八カ月の刑を受けた……。出所した石川は、河田組から十年間の関東所払いになっているため大阪へ流れた。そして一年後。ペイ患者となり一段と凄みの増した石川が、今井組の賭場に現われた。だが、石川は、一番信頼していた兄弟分の今井からも説教され、狂ったように今井を撃ち殺した。一匹狼となった石川は、自殺を企るが死に切れず、警察病院で治療を受けた後、殺人及び殺人未遂で十年の刑に服した。昭和二十六年一月二十九日、地恵子が自殺した。それは胸部疾患の悪化した石川が病気治療のため仮出獄する三日前の事だった。地恵子の骨壷をぶら下げ、骨をかじりながら歩く石川の姿は、まるで死神のようだった。そして神野、松岡、河田の邸にまで出向き金をせびり取った石川は、その金で自分の墓を建てた。昭和二十九年一月二十九日、石川力夫は府中刑務所において、二十九歳の短い一生を自らの手で終えた。その日は奇しくも、亡き妻・地恵子の三回忌でもあった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2018年8月上旬特別号

巻頭特集 キネマ旬報創刊100年特別企画 第2弾 1970年代日本映画ベスト・テン:ベスト15グラビア解説

1975年4月上旬春の特別号

映画批評:仁義の墓場

1975年3月上旬号

日本映画紹介:仁義の墓場

2024/07/12

82点

選択しない 


異様な迫力

伝説のヤクザ石川力夫の壮絶な人生を描いた実録路線のドラマ。あまりに衝動的、暴力的な性格でコチラの感情移入を受け付けない。だから、ただ、ただ呆気に取られながら観続けるしかない異様さがある。随分と世話になったハナ肇の親分にまで暴力を振るうなど、狂犬の様な凶暴さの半面、惚れた多岐川裕美が死ぬと悲しみにくれ未練がましく、挙句に遺骨をぽりぽり食べ始める。ヤク中だからというだけでない激しい感情の振幅を感じる。この人はじっと耐えるとか我慢する事ができないのではないか。ヤクに手を出すのもそういう弱さからかもしれない。最後、刑務所で飛び降り自殺するのも然りか。こういうエキセントリックな役を渡哲也が好演。深作欣二監督の演出も相変わらず迫力ある画面作りで凄い。

2022/06/08

2022/06/08

70点

レンタル 


実録路線の極み

東映やくざ映画が仁侠から実録に代わったが、実録とはいうものの大半はフィクションだと言う。実在の事件や人物を取り上げても、フィクションだと断って置かないと、題材がコワいお兄さん方なので、後でもめたら難儀なことであるだろうし。

この作品での石川力男も実在の人物である。冒頭で彼の親族の証言を聞くことができる。だが、彼に関して分からないところが多くて、大半が創作だということだ。

無法者の暗黒街とて、彼らの掟がある。その掟をやぶり自分のその場の思いつきや感情で行動してしまい、自分の親分の立場を危うくしてしまうし、自分の立場とて危うい。後でどうなるのかを考えずにパッと行動する狂気。冒頭の親族の証言に「頭は良かった」というのが信じられない狂暴で無謀である。

映画のアウトローは法律の外にいる迷惑な人間だが、主人公であるからある程度の観客の共感も得る。ところが本作の石川力男の行動には一ミリも共感を呼ばない。何故、自分をこんなに追い詰める行動ばっかりするのか、理解をはるかに超えている。親族の証言で幼い頃、泣きだすと二時間でも三時間でも泣き続けた」というのがある。彼が思いつくままに行動するのはその子供っぽさが大人になっても抜けきらないのだろうと想像するが、彼のメチャクチャさは破天荒だ。予告編では自由奔放と字幕が出るが、こういうのに自由奔放というのは違和感がある。

それなのに映画は面白い。病み上がりの渡哲也の鬼気迫る演技、特に亡くなった妻の骨をかじりながら、親分に要求する場面は異様な雰囲気を醸し出す。
深作欣二監督も荒っぽく勢いだけで突っ走る演出で、主人公への共感はなんのその、彼の破滅人生を見せる。やっぱり深作欣二監督は実録路線がぴったり合っていて、この分野でこそ才能が発揮される。

今回はシナリオが笠原和夫ではない。彼ならばある程度の共感を得る脚本を書くかも知れないなあ、とちょっと思った。

2022/01/15

2022/01/15

90点

VOD/U-NEXT/レンタル/PC 


しばし体の震えが止まりません

 20才前後に見た時も、アウトローの生き様が凄すぎて言葉が出ませんでした。ただ、多岐川裕美の可憐さを留めておこうと思いました。

 「神々の深き欲望」が今村監督のやる気なら、これは深作監督の本気さです。同じ出身地の青年に魅せられたということでしょうか。

 組長を斬りつける、10年間の所払いという罰には従わない、昔の仲間にも斬りかかるなどなど、あまりにも無軌道。動機も浅い。その自由奔放さの代償として、蝕まれる身体。その様を、渡哲也が熱演します。

 孤独さ。出会うべき人に出会っていれば、別な人生もあったという思いなど、この作品は許してくれません。墓で倒れて、空に飛んでゆく風船は、この男の魂かもしれません。

 黒のカッパから、毛布をまとい、ニヤリと笑って空を舞う姿に、今回も言葉を失うと同時に震えが出て、しばし止まりません。・・・(凄)。

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 後日、冷静になり、もう一度思い起こしました。上のような感想では、40年前とさして変わりがない。成長がありません。

 墓を刻まさせている時、石川はニヤニヤしていました。仁義を思いついたのでしょう。人生が大笑いなら、仁義は大見栄な訳です。
 共感不能、自分の命も他人の命も粗末にする男が、充実の演出力で、何の飾りもなく何の遠慮もなく、徹底的に描かれることで、私が受けた衝撃は、生の充実ということだったのです。
 「仁義なき戦い」が深い問いかけなら、「仁義の墓場」はもっとしっかり生きよという強烈な励ましなのです。

 これで、スッキリしました。

2021/12/05

2021/12/05

87点

映画館/東京都/新文芸坐 


仁義なき戦いシリーズに匹敵

本作品はじめての鑑賞。
渡哲也って石原軍団のイメージが強くて、義理堅く高倉健さんのような作品で輝く役者なんだろうと思い込み、一度も観たことがなかった。

今回はじめて観たがとても素晴らしい。「仁義なき戦い」シリーズに匹敵するほどの面白さ。
オープニングから破壊力のある攻撃的なBGMと仁義なきシリーズのように迫力ある筆文字っぽい書体でのキャスト紹介。あっという間に心を奪われてしまった。

木を見て森を見ず的な渡哲也演じる石川が元々いた組にも追われて、薬漬けになるまで落ちていく物語。
怒りに任せて挙げ句の果てに堕ちていく様子を凄い熱量で演じきる。

脇役も豪華で、田中邦衛などは仁義なきシリーズの腰巾着な役より、組に属さない異常者のキャラクターのほうが適役なんじゃないかな、とさえ思ってしまった。

この時代は多岐川裕美なんかもヤクザ映画に出演していたのねー。ホントに多岐川裕美かな、と自分の認識を疑って終映後に確認しちゃったよ。

2021/06/13

2021/06/19

75点

レンタル 


やくざも手を焼く

義理と人情で成立していたやくざの世界で、それが全く通じない型破りな人物が主人公。この人物がやくざから仁義を無意味なものとした。現体制をひっくりかえす破天荒さ、わがまま、無自覚を備えた人物に当時の人は熱狂したのだろうか。
渡の演技は真に迫って素晴らしい。

2020/08/18

2020/08/18

78点

VOD/U-NEXT 


渡哲也追悼鑑賞。

どれを観るか迷ったが、ちょうどラジオで町山さんがこの作品を強く勧めてくれた。そもそも「大都会」や「浮浪雲」の印象が強くてどちらかと言うとテレビの人だと思っていた。
「仁義なき戦い」に並ぶほどのクオリティじゃないか。知らなかった。

深作欣二色最もつよし。真っ赤なタイトル、クレジットの文字の使い方からいきなりアゲてきやがるぜ!

脇役のオールスターぶりも驚くほかない。いってみれば全員主役級。病気から回復した渡哲也の人望がそのままキャスティングにつながったんだろうと思われる。つまりは義理と人情である。素晴らしい!

キャラクターのタガの外れ方もこりゃ確かに後のタランティーノはじめあらゆるバイオレンス映画へ影響を与えたのは確実だろう。

実話であることの証左としての写真や書類のインサート、特にオープニングのNHKドキュメントもかくやという作りは単なるヤクザ映画の域を超えている。