雪之丞変化(1963)

ゆきのじょうへんげ|Revenge of a Kabuki Actor|Revenge of a Kabuki Actor

雪之丞変化(1963)

amazon
レビューの数

53

平均評点

70.5(179人)

観たひと

265

観たいひと

17

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1963
公開年月日 1963/1/13
上映時間 113分
製作会社 大映京都
配給 大映
レイティング 一般映画
カラー カラー/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督市川崑 
脚色伊藤大輔 
衣笠貞之助 
シナリオ化和田夏十 
原作三上於菟吉 
企画藤井浩明 
高森富美 
製作永田雅一 
撮影小林節雄 
美術西岡善信 
音楽芥川也寸志 
録音大谷巖 
照明岡本健一 
スチル西地正満 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演長谷川一夫 中村雪之丞
長谷川一夫 闇太郎
山本富士子 お初
若尾文子 浪路
市川雷蔵 昼太郎
勝新太郎 島抜け法師
船越英二 門倉平馬
市川中車 中村菊之丞
林成年 ムク犬
中村鴈治郎 土部三斎
柳永二郎 広海屋
大辻伺郎 岡っ引1
伊達三郎 川口屋
中村豊 町人風の男2
千葉敏郎 浪人1
南道郎 町人風の男1
浜村純 脇田一松斎
加藤嘉 奥役
真城千都世 町人風の女
毛利菊枝 お三婆
水原浩一 三斎の家臣
尾上栄五郎 将軍
沖時男 岡っ引2
菊野昌代士 雪之丞の父
徳川夢声 語る人

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

昭和十年朝日新聞連載三上於菟吉同名の原作から「王将(1962)」の伊藤大輔と「抜打ち鴉」の衣笠貞之助が共同で脚色、「私は二歳」の和田夏十がシナリオ化。市川崑が監督した仇討ちもの。撮影もコンビの小林節雄。出演は「秦・始皇帝」長谷川一夫、山本富士子、勝新太郎、若尾文子、「秦・始皇帝」「陽気な殿様」の市川雷蔵、真城千都世、尾上栄五郎など。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

ここは市村座の舞台に舞う上方歌舞伎の花形女形、中村雪之丞は、思いがけなくも冤罪で父を陥れた、もと長崎奉行、土部三斎一味の姿をみた。江戸下りの初舞台に早くも怨み重る仇に巡り会おうとは……。師の菊之丞は、逸る雪之丞を抑え訓すのだった。その夜の帰途、雪之丞は一人の刺客に襲われた。かつての剣のライバル門倉平馬だった。その場は忽然と現われた侠盗闇太郎に救われた。さて、三斎の娘浪路は、先日の観劇以来、雪之丞のあで姿に側室の身を忘れ恋患の床についた。これを知った川口屋は、大奥を動かすには浪路の機嫌をと、一計を案じた。それを聞いた雪之丞は好機とばかり浪路に近づくが、地位も名誉も捨ててひたすら己にすがる浪路をみて胸を痛めるのだった。そこへ相棒のムク犬を見張りに、女賊のお初が三斎の屋敷に忍びこんできた。だが、雪之丞に発見され追い返されてしまった。胸のおさまらぬお初は、雪之丞の部屋に忍びこみ、そこで雪之丞の秘密を知ってしまった。一方、川口屋は江戸の飢饉に乗じて、江戸中の米を買いしめていた。雪之丞は川口屋の相棒広海屋をそそのかし、広海屋の米を投売に江戸に出させた。ために川口屋は破産し、広海屋に火をつけた。慌てた広海屋は川口屋を絞め殺し、三斎の力をかりるため、浪路を誘拐した。だが広海屋は浪路に刺され、浪路は島抜け法師によって闇太郎の隠家に連れこまれた。闇太郎の知せで雪之丞が駆けつけた時はおそく、浪路は死んでいた。雪之丞は、三斎との対決に彼の屋敷へ乗り込んだが、三斎はもはやこれまでと自から毒を呷った--。長崎一の海産商、松浦屋清左衛門に無実の罪を押しつけて、謀殺した時の長崎奉行土部三斎と広海屋、それに松浦屋の番頭であった川口屋は、松浦清左衛門の遺児雪之丞によってことごとく裁かれた。江戸最後の舞台をつとめる雪之丞の美しい顔には、一抹の淋しい表情が現われていた。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1963年3月上旬増大号

日本映画批評:雪之丞変化

1963年2月下旬号

日本映画紹介:雪之丞変化

1963年1月下旬正月特別号

新作グラビア:雪之丞変化

1963年1月上旬新年特別号

2大シナリオ特集:雪之丞変化

2023/09/28

2023/09/28

70点

テレビ/無料放送 


仕掛けられた舞台

市村座の女形役者、お山、太夫である中村雪之丞(長谷川一夫)が雪の降る舞台で舞っている。諸々の面々がこの舞台を観劇している。
スリの男ムク(林成年) を連れた色気のない姉御のお初(山本富士子)は「ちぇ」と言ったり、「畜生」と言ったりして愉しい。太夫に刃物を向けたかと思えば、突如として逃げ出し、遠くへ消えていく。また、川に飛び込むときに「河童」を名乗るなど、小悪魔と道化を兼ねたキュートさをみせている。
歌舞伎の舞台と演技は伝染する。菊之丞(市川中車)は雪之丞の因果や仇などを呑み込み、彼女と共演している。師匠の一松斎(浜村純)の道場で雪之丞と兄弟でもあった平馬(船越英二)は、闇夜に乗じて雪之丞に襲い掛かる。そこに闇太郎(長谷川一夫)も現れる。こうした仕掛けは、舞台仕掛けであり、アクションやセリフも舞台がかっている。そして刀と言葉が交わされる。
その背景となる闇は濃い。闇太郎は神出鬼没に画面に見え隠れし、闇太郎と対照をなす昼太郎(市川雷蔵)は、僻みっぽく、スターである雪之丞と同じ顔をした闇の親分である闇太郎を妬んでもいる。映画的にメタなつぶやきを、塀の上に立って、板葺屋根の路地で、あるいは川船の上でつぶやいている。
威張っており御前とも御殿とも呼ばれる三斎(中村鴈治郎)が太夫の真の仇である。その屋敷へと太夫は招かれている。川口屋(伊達三郎)や広海屋(柳永二郎)といった悪者顔の者たちもそれぞれに刺され、毒をあおり、首を絞められ応報といった具合に崩じていく。
浪路(若尾文子)と太夫は、一時ではあるが対面している。蝋燭の灯が画面左下手前に揺らめている。太夫の心情や思惑が時にナレーションによって暴露される。ときにそうした心情は、人物のセリフにオーバーラップし、セリフをかき消していく。また、闇太郎は塀の前や後ろで役者のように独り言を口走っている。こうした仕掛けもまた舞台的であり、トリックのような撮影とあいまって不可思議な幻想へと観客を誘う。
おかしな男(勝新太郎)は老婆を縛り上げ、押し入れに押し入れてしまう。米の買い占めによる相場の高騰や打ち壊しなどの江戸後期の社会現象もとらえつつ、荒ぶる民衆の瞬時の顔が大写しにされる。老婆や民衆は、こうした仕掛けが満載された舞台に立っていたのだろうか。

2023/09/26

2023/09/26

55点

テレビ/無料放送/BS12 トゥエルビ 


長谷川一夫映画出演300本記念の大作。顔ぶれも豪華ながら、ただただ長谷川一夫を見る映画。市川崑の凝りに凝った絵作りと胸の内まですべてあからさまにする台詞がそぐわない。まどろっこしいテンポが勿体ない。

2023/05/17

2023/05/18

50点

レンタル/千葉県 


悪夢の雪之丞

本作は何度も映画やTVドラマ化された古典的時代劇なのだそうだ。
本作の主演長谷川一夫は、1935~6年に松竹で映画化されたものでも主演しており、300本記念映画の企画とするのだから相当な思い入れがあったのだろう。
監督は当時の大映のエース級監督市川崑がとり、当時の大映のスターが勢ぞろいするのだから力の入れようがわかる。
実際山本富士子のおきゃんな盗賊ぶりのセリフ回しの小気味よさや若尾文子の純な娘の悲劇的な崩落ぶり、雷蔵のコミカルな狂言回しといった面白い場面も多々ある。
ただ致命的なのは主演の長谷川一夫その人だろう。
上方歌舞伎の流れで様式美(立ち居振る舞いや衣装、着こなし)重視であることは理解できるが、55歳の太ったおっさんが演じるのは辛い。
芝居で一過性で終わるものとは異なりフィルムで見る雪之丞は悪い冗談としか思えない。
2役やっている闇太郎を主役にするような脚本にアレンジすればよかったのだろうが、当時はそうもいかなかったのだろうな。
スターも引き際か変化が重要な選択なのだが、錯覚してしまったのだろうな。

2023/02/06

2023/02/11

60点

映画館/東京都/角川シネマ有楽町 


大映スター総出演

大映4K映画祭の1本。「長谷川一夫300本記念映画」というタイトルが最初に出る。市川崑監督らしいモダンな映像と洒落たジャズ風の映画音楽(芥川也寸志)。話は復讐譚で、長谷川一夫は、親の敵を討つ雪之丞とその成行きを見守る盗賊“闇太郎”の二役。大映スター総出演で、船越英二、若尾文子、山本富士子、市川雷蔵、勝新太郎が映画に華を添える。復讐されるのは、中村鴈治郎、柳永二郎、伊達三郎。

2023/02/08

2023/02/08

70点

映画館/東京都/角川シネマ有楽町 


長谷川一夫の300本目記念作品ということで、彼がメインになるのは当然としても脇役陣の豪華なこと。大映の二大看板となる雷蔵と勝新をあんなちょい役で使うとは。それだけ長谷川一夫が大スターであったということの証だろう。
さすがに寄る年波にはその美貌にも衰えが目立つが、その重厚感、存在感は別格。
ただ、私にとってはまだ若い若尾文子の可愛らしさも嬉しいのだが、何と言っても山本富士子の女盗賊の恰好良さ。気風の良い啖呵も彼女のイメージからはちょっとそぐわない感じもしたが、そんなこともすぐ気にならなくなるほどの、あの美貌。本当に全盛期の彼女は最高ですね。

2022/02/28

2022/03/01

76点

選択しない 


映画スター共演

映画が映画スターによって演じられていた良き時代の映画。舞台を意識した市川崑の演出が素晴らしく陰影を生かした画面が印象的でした。こんなにレベルの高かった日本映画ですがその山本富士子を大映の永田社長が五社協定で締め出してから斜陽へ向かいます。