2020年9月15日に鑑賞。DVDにて。1時間38分55秒。ワイド・カラー。助監督:篠原正秀、擬斗:谷明憲。振付:藤間勘五郎、民謡指導:別府金蝶・別府富子、博多弁指導:貞包 瞰、和楽:中本敏生、[協力]北九州市、第一港運株式会社。
他の出演者は、小松方正、汐路章、有川正浩、木谷邦臣、岡嶋艶子、川谷拓三。川谷拓三は台詞なし。高倉健に斬られて襖に突っ込む。
シリーズ1作目。このシリーズで良いのは、本作「日本女侠伝 侠客芸者」(1969)と5作目「日本女侠伝 激斗ひめゆり岬」(1971)でしょうか。
藤純子が美しい。眼福です。
藤純子(信次)の啖呵が心地良い。純子は陸軍の座敷をしくじって新橋にいられなくなって、博多の馬賊芸者となる。純子「馬鹿野郎!」と陸軍大臣・坂田(若山富三郎)の頭を銚子で殴る。純子「ご勝手になさいまし。たかが芸者にも、人としての意地もあれば誇りもございます。それを踏みにじってご成敗するとあれば・・・」
明治末~大正の始め。博多。石炭ブームに湧く。馬賊芸者とは?客「ワシらのものを全部質にぶち込みよった」純子、質札を「45円80銭、過分のご祝儀ありがとうございます」なるほど。馬賊とは、そう言うことか。客は質から出すには、また同額を質屋に支払う必要がある。
成金大須賀(金子信雄)は座敷で札をばらまく。金子「腹は決まったか?」純子「お断りしたはずです。私に惚れたとおっしゃいましたね?女たちに猿のまねをさせるお偉い御仁に、惚れた腫れたはお門違いですよ」
炭鉱夫小松方正ら3人「一生の思い出に」と。純子と小松、負けた方が脱ぐ遊び(箸けん?)太鼓持ちの藤山寛美が踊る「田舎の別嬪さんが立ち小便 下でカエルが驚いた 熱い雨だと逃げ出した」小松10円しか持っていない。高倉健「俺が払います」純子「あたしが済んだと言ってるんですから。いいんです。くどいね。遊びというのは心意気だ。それが分からないのお兄さん」高倉「払うよ」純子「この人ったら」高倉「俺が悪かった。今日の所は借りにしといて貰う」純子「じゃ、お別れに一杯」高倉は下戸である。
博打場。二階建ての木造建築。土塀に囲まれた家。いいね。籠の中に3個のサイコロ。
柳町遊郭から女郎の足抜け。幸太「腰が立たんぐらい客取らされて。だが前借[ぜんしゃく]が増えるばかりで」庄司花江「萬場[ばんば]組の半端者が博多芸者に手を出すよ!」汐路章、ドスを抜く。純子「ドングリまなこひん剥いて、こんなおもちゃ振り回して・・・(この台詞はドングリまなこの汐路章への当て書きだ)」汐路「しゃからしか!」汐路は女たちに囲まれて耳たぶを引っ張られる(笑)
純子、高倉の花田炭鉱へ。純子「私がいつお世辞を言いました。私、見たんです。あんな大須賀の山なんか潰れます。心配だったの。島田さんの山があそこみたいだったらと・・・」『おてもやん』を踊る純子。小松ら3人の炭鉱夫を既に見ている訳だから、それは杞憂だ(笑)
「水茶屋藝妓組合 水茶屋券番」、「信次の文字の提灯」=名板「信次」「小秀」「玉子」「寿々子」。
陸軍大臣坂田(若山富三郎)が博多に来た。宴会場。若山「信次どんではなかか?物心ついて頭を叩かれたのは、親父と西郷先生とおまんしかなか。おいどんはあれ以来、女子を口説くのが恐ろしうなってしもうた(笑う)」この若山は「緋牡丹博徒」と同じ役割である。末席の高倉「あっしは不調法でして。何とおっしゃても飲めないものは飲めません」若山「気に入った」純子「私がその盃を代りに。島田さんの名代でございます」若山「お前惚れてるのか」純子「惚れています」金子が大盃を持って来た。銚子6本が注がれる。純子、大盃を空ける「ご無礼致しました」
高倉「昨夜の話はなかったことにしてくれ。俺は前科者だ。しかも二度だ。一度刺さったトゲは・・・」純子「6つの時でした。赤い鼻緒の草履がほしくて。どこにでもある草履です。それを買えなかったんです。10歳の時に母が死んで芸者屋に売られて。嫌なお客にも白い歯を見せて、いつの頃からか、女だてらに一升酒飲むようになって・・・私にだって数え切れない程のトゲが刺さってるんです」
純子が自分で縫った高倉の着物を風呂敷から出して愛おしそうに触る。いいね。
婆や「親方が決めた許嫁です。お似合いと思いませんか。今年中には。そうなれば花田も万々歳です」純子の顔が曇る。
屋台で1人コップ酒の純子。酔って金子へ。純子「いつかの話、本気にしていいんですか?あの人はもう死にました。私の心の中でとっくに」「値段をつけてくださいな」金子「言い値で買ってやる」高倉来た。金子「今日から信次は俺のものだ」高倉が純子を殴る。高倉「この人が何を頼んだか知らないが、若松のことは俺とあんたの間のことだ。俺が惚れた女だ。連れて帰るぜ」
雨。傘の2人。高倉「痛かったか?」純子「いいえ、嬉しかったわ。弥生さんていいお嬢さんですね」高倉「会ったのか。おめえさん、それであんなまねを。お嬢さんには相応しい男はいくらでもいる。婿を貰って一本立ちを見届けたら、俺はここから消えるつもりだ」雨の中、2人の向こうに木橋が見える。東映任侠映画の定番のシーン。男女2人と「橋」である。
桜町弘子が金子に斬りつける。金子「味方した奴はここでは働かせん」純子、券番の名板を外す。金子の座敷にお酌も誰も来ない。金子「太鼓持ちを呼べ!」藤山寛美「太鼓持ちは客によって音が出まんね。遊びのあの字も知らんヤボ天に音が出せまっか」純子がピストルを撃つ「これは川原の旦那のピストルや。あの世で旦那に詫びを言いいたい奴から出ておいで。大須賀が頭を下げて来なくちゃ、博多の町から紅い灯が消えるって、帰って大須賀に言いな」
新聞『紅灯消えて既に3日 団結固し水茶屋券番』『相券 中券の美妓も起つ 紅灯スト愈々拡大』『構わんやらせとけ 悠然と嘯く大須賀社長』『坂田陸相 再び博多へ 石炭業界の代表と懇談』
「若松仲仕組合事務所」、高倉「ウチの石炭を積み込んでください。山には100人を越す人たちと家族がいる。その人たちを見殺しには出来ないんです。何でもやります」
金子「俺の負けたい。座敷に出てくれ」
炭坑に金子がダイナマイトを。爆発。高倉「早まるな。あの3人は山を守って死んでくれたんだ。仏が一番喜ぶことをなぜやってやらないんだ」3人の棺。棺の中に康太と書いたカンテラだけ。
別れ。純子「とぼけるのは、私の方が上手です。止めやしません。教えて。今夜ね」帯から出したピストルを渡す。高倉「止めないでくれ。先のことは知らないが、今の俺たちはそれぞれやることが違う。死にやしねえよ」純子「行かないで」と縋る。
高倉の独白『どうせ死ぬなら桜の下で 死なば骸[むくろ]に花が散る』これは、劇中でも歌われる「都々逸」?のようだ。
純子が縫った着物の高倉。背中の「不動の刺青」。日本刀を鞘ごと地面に縦に叩きつけて鞘を割った。これは初見。
アバンタイトルなし。このシリーズでは「花」がモチーフになっている。「決斗乱れ花」(第4作)は「赤い彼岸花」、「鉄火芸者」(第3作)は「紫陽花」である。ところが「侠客芸者」(第1作)、「真赤な度胸花」(第2作)には花のモチーフはない。