小学生の間で広まった学校に出るお化けの話を集めた同名ベストセラーの映画化作品です。映画の専門誌などでかなり前評判が高かったのは知っていましたが、しょせん子供相手の映画だもの、とタカをくくって見に行ったのでした。
ところが、想像以上の出来上がりに正直びっくりしました。お金と最新鋭の技術を駆使したハリウッドの娯楽大作だけがエンターテイメントではないと、日本映画でもこんな娯楽作品が出来るんだと、なんだかうれしくなってしまいました。
とにかくよく出来た作品です。スタッフたちがいかに一つ一つ丁寧に、楽しみながらこの映画を作り上げたかが、伝わってくるような手作り感があります。登場するお化けや妖怪のキャラクターは、それぞれ恐いけれどどこか明るさがあり、それでいていかにも作りモノという安っぽさが感じられません。要するに、映画の雰囲気によくとけ込んでいるのです。
登場する子役たちも実にいきいきと描かれています。よく現実には絶対言わないような言葉を子役にしゃべらす脚本がありますが、この映画の子供たちのしゃべり言葉は、まさにいまどきの小学生そのまんまです。子供たちそれぞれの生い立ちや家庭環境などは、ほとんど描かれていないにもかかわらず、なにげないシーンから彼ら一人一人の性格や背景がなんとなく想像できてしまう。また、野村宏伸演じる先生も、なんとなくつかみどころのない今ふうの若者なのが面白い。生き生きした子供たちに、教師の自覚があるのかないのかわからないようなぬぼーっとした先生と、登場人物のキャラクターがそれぞれバランスよく描かれています。
この映画が単なる「お化け映画」で終わっていないもう一つの魅力は、胸がキュンとなるような童心を思い出させてくれることでしょうか。先生は子供の頃、他の悪ガキと一緒に一人の女の子を家庭科室に閉じこめた思い出があり、どうしてその女の子が密室から逃げ出すことが出来たのか、いまだに不思議に思っています。映画の終盤、その答えのヒントになるシーンがありますが、このエピソードはとてつもなくファンタジックです。またラスト近く、一人の女の子の正体が明かされますが、このエピソードも怪談話などによくあるパターンで、実になつかしさを感じさせてくれます。彼女との別れを悟った時の少年の表情に思わずこちらもジーンと来てしまいました。
お化け屋敷のように恐くて、面白くて、そしてファンタジー映画みたいにホロリとさせてくれる、そんな大人の鑑賞に十分耐えうる娯楽作品です。血生臭いシーンや暴力場面はありませんので、安心して子供たちと一緒にお楽しみください。
(1995/7/15 記)